退職後でも未払いの給料を会社に請求できる? 注意点や相談先を解説

2024年05月14日
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退職後でも未払いの給料を会社に請求できる? 注意点や相談先を解説

2022年度に千葉県内の労働基準監督署が監督指導を行った959事業場のうち、賃金不払残業があったものは94事業場でした。

給料が未払いとなった状態で退職した場合は、退職後であっても会社に対して未払い給料(未払い賃金)を請求できます。弁護士のサポートを受けながら、未払い給料全額の回収を目指しましょう。

本記事では退職後の未払い給料請求について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。

出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」(千葉労働局)

1、退職後でも給料未払いがあったら請求できる?

労働者には、働いた分の給料(賃金)について会社から支払いを受ける権利があります。労働者が退職した場合でも、在職中に発生した未払い給料を退職後に請求することは可能です

  1. (1)退職後でも未払い給料は請求可能

    未払い給料の請求権は、労働者が退職した場合でも消滅しません。従って在職中と同様に、退職後であっても未払い給料を請求することは可能です。

  2. (2)未払い給料の主な請求方法

    未払い給料の主な請求方法としては、以下の例が挙げられます。

    ① 内容証明郵便による請求書の送付
    内容証明郵便により、会社に対して未払い給料の請求書を送付します。会社から返答があった場合は交渉を行い、合意に至ったら合意書を締結して、その内容に従って未払い給料を精算します。

    ② 支払督促の申立て
    裁判所に対して支払督促を申し立てます。会社が一定期間内に異議を申し立てなければ、会社財産に対する強制執行が可能となります。
    参考:「支払督促」(裁判所)

    ③ 労働審判の申立て
    裁判所に対して労働審判を申し立てます。裁判官1名と労働審判員2名で構成された労働審判委員会が、調停(話し合い・合意)または労働審判(強制的な判断)によって解決を図ります。審理が原則として3回以内で終結するため、迅速な解決が期待できます。
    参考:「労働審判手続」(裁判所)

    ④ 民事訴訟の提起
    裁判所に訴状を提出して民事訴訟を提起します。未払い給料請求権の要件を労働者側が立証できれば、会社に対して未払給料の支払いを命ずる判決が言い渡されます。

2、退職後に未払い給料を請求する際の注意点

退職後に会社に対して未払い給料を請求する際には、特に以下の3点に留意して対応しましょう。



  1. (1)給料請求権の消滅時効に要注意|発生から3年

    給料請求権は、行使できる時(=給料の支払期日)から3年間が経過すると時効によって消滅します(労働基準法第115条、附則第143条第1項)。

    そのため、かなり前の時期から給料の未払いが生じている場合は、退職後時間がたつほど、請求できる未払い給料が少なくなってしまいます。

    内容証明郵便の送付、労働審判の申立て、訴訟の提起などを行えば、消滅時効の完成を阻止できますので、早めに弁護士へ相談することをおすすめします

  2. (2)会社が倒産した場合│未払賃金立替払制度を利用

    労働者が退職した後、未払い給料がまだ残っている段階で会社が倒産してしまうケースもあります。会社が倒産した場合は、「未払賃金立替払制度」を利用できるかどうか確認しましょう。

    未払賃金立替払制度とは、企業倒産によって給料が未払いのまま退職した労働者に対して、未払い給料の一部を立替払いする制度です。要件を満たす労働者は、労働基準監督署に申請すれば未払い給料の立替払いを受けられます。

    未払賃金立替払制度を利用できるのは、使用者・労働者のそれぞれについて以下の要件を満たす場合です。

    <使用者に関する要件>
    • ① 1年以上事業活動を行っていたこと
    • ② 倒産したこと(以下の(a)または(b)のいずれか)
      (a)法律上の倒産(破産・特別清算・民事再生・会社更生)
      (b)事実上の倒産(中小企業について、事業活動が停止して再開の見込みがなく、賃金支払能力がない旨を労働基準監督署長が認定した場合)

    <労働者に関する要件>
    法律上の倒産については裁判所への申立て等、事実上の倒産については労働基準監督署への認定申請が行われた日の6か月前の日から2年の間に退職した者であること


    倒産が間近に迫った段階で退職した場合や、倒産してから退職した場合には、未払賃金立替払制度を利用できる可能性が高いので、労働基準監督署に相談しましょう。

    参考:「未払賃金立替払制度の概要と実績」(厚生労働省)

  3. (3)未払いが60万円以下の場合│少額訴訟を利用

    請求額が60万円以下である場合は「少額訴訟」を利用できます。

    通常の訴訟は長期間を要するケースが多く、労働者にとっては大きな負担となるのが難点です。一方、少額訴訟の審理は原則として1回で終了し、控訴も認められていないため、早期に紛争を解決できる点が大きなメリットです。

    60万円以下の未払い給料を請求する際には、少額訴訟の利用をご検討ください。

    参考:「少額訴訟」(裁判所)

3、退職後の未払い給料請求に関する相談先

退職後に会社に対して未払い給料を請求したい場合は、行政機関や専門家に相談しましょう。

退職後の未払い給料請求に関する相談先としては、行政機関では都道府県労働局や労働基準監督署、専門家では弁護士が挙げられます。

  1. (1)都道府県労働局・労働基準監督署

    「都道府県労働局」は、全都道府県に設置されている厚生労働省の地方支分部局で、労働条件に関する事項などを所管しています。

    「労働基準監督署」は、都道府県労働局の下部機関で、労働基準法の順守等について管轄地域内の事業者を監督しています。

    都道府県労働局および労働基準監督署には「総合労働相談コーナー」が設置されています。

    総合労働相談コーナーでは、未払い給料の問題を含めて、会社とのトラブル全般について無料で相談可能です。未払い給料の請求方法や注意点などについて、一般的なアドバイスを受けられます。

    ただし、都道府県労働局および労働基準監督署はあくまでも行政機関であり、労働者の代理人ではありません。会社に対する未払い給料請求について、具体的な対応を代理で行ってもらうことはできない点にご注意ください。

    参考:「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」(厚生労働省)
    参考:「全国労働基準監督署の所在案内」(厚生労働省)
    参考:「総合労働相談コーナーのご案内」(厚生労働省)

  2. (2)弁護士

    弁護士は法律の専門家で、主に紛争に巻き込まれた当事者の代理人として活動しています。未払い給料請求については、労働者の代理人として会社と交渉したり、正確な未払い分について算出したり、訴訟などの法的手続きの対応を行ったりすることが弁護士の職務です

    未払い給料請求を自分で行うのが大変な場合や、法的な観点から適正額の未払い給料を回収したい場合には、弁護士に対応を依頼するのがよいでしょう。

4、未払い給料請求を弁護士に依頼するメリット

未払い給料請求を弁護士に依頼することには、主に以下のメリットがあります。退職後も未払い給料が残っている場合は、お早めに弁護士へご相談ください。



  1. (1)未払い給料の金額を正確に計算できる

    弁護士は、労働基準法の規定および労働の実績に基づき、未払い給料の金額を正確に計算します。労働の対価を漏れなく回収したい場合には、弁護士に未払い給料の金額計算を依頼するのが安心です。

  2. (2)残業の証拠収集についてアドバイスを受けられる

    会社を退職した後では、在職中の残業について手元に証拠がないケースもあります。客観的な証拠をそろえられなければ、適正額の未払い給料を回収することは困難です。

    弁護士は、残業の証拠の収集方法を具体的な状況に応じてアドバイスいたします。弁護士のサポートを受けることで、在職中の残業について充実した証拠をそろえることができ、未払い給料を満額回収できる可能性が高まります。

  3. (3)会社との交渉や法的手続きを一任できる

    弁護士に依頼すれば、会社との交渉や法的手続きの対応を一任できます。個人で会社と交渉を行おうとしても話し合いのテーブルに着くことも容易ではないケースも珍しくありません。

    弁護士を窓口とすることで交渉がスムーズになることが期待でき、時間や労力、精神的なストレスが大幅に軽減されるでしょう。

5、まとめ

在職中に未払いとなった給料は、退職後であっても会社に対して請求可能です。未払い給料(未払い残業代を含む)を満額回収するためには、在職中の労働に関する証拠を集めた上で、労働基準法の規定に従って正しく計算した金額を会社に対して請求しましょう。

ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスには労働問題の実績ある弁護士が所属しております。未払い給料請求に関するご相談を随時受け付けておりますので、お困りの方はいつでもご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています