休日出勤手当はどんなときにでる? 割増率と計算方法について
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給与明細を見て「休日に働いたのに手当が出ていない」と思っていませんか?仕事の都合で休日出勤が避けられないことはありますが、その際にはきちんと割増分が支給されているか確認する必要があります。
令和元年度の千葉県労働相談件数は約5万件にのぼっており、この中には休日出勤手当に関する相談も含まれているでしょう。
本コラムでは、休日出勤手当が支給されるケースと、具体的な計算方法について解説します。
1、休日出勤手当はどんなときに出る?
「休日出勤」というと一般的には土日や祝日に働くことを指すこともありますが、労働法においては必ずしもそうではありません。また一口に休日出勤といっても、手当が出るケースと出ないケースがあります。まずは基本事項をご説明します。
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(1)休日には法定休日と法定外休日がある
休日出勤とは、労働義務のない日に働くことです。休日出勤には、法定休日と法定外休日があります。
労働基準法第35条では、使用者は労働者に「毎週少なくとも1回、もしくは4週間で4日以上の休日をとらせなければならない」と定めています。
これに当たるのが法定休日です。
一方で法定外休日とは、法定休日とは別に会社から労働者に与えられる休日のことです。「所定休日」とよばれることもあります。
労働基準法第32条では「1日8時間、1週間40時間を超えて働かせてはならない」(法定労働時間)と規定しています。1週間に休日が1日だけだと週40時間をオーバーしてしまうことがあるため、企業は法定休日とは別に独自に休日を設定しているのです。
たとえば週休二日制で土日休みとしている企業で、土曜日が法定外休日、日曜日が法定休日といったケースです。
なお法定休日に労働者を働かせる場合には、事前にその規定を盛り込んだ「三六協定」を締結しておかなければいけません。休日の制度は、通常はそれぞれの企業の就業規則や雇用契約書に規定されています。まずそちらを確認してみましょう。 -
(2)法定休日には休日出勤手当が支給される
法定休日に出勤した場合、「休日出勤手当」としてその日に働いた時間すべてに対して割増賃金が支給されます。割増率は35%以上です。
一方で法定外休日の場合、原則として法定労働時間である「1日8時間または1週間で40時間」を超えた部分についてのみ、時間外労働(残業)にあたるとして割増賃金が支給されます。割増率は25%です。
たとえばその週にすでに35時間働いていて法定外休日に8時間働いた場合、その週の労働時間は合計で43時間です。そのため休日出勤のうち5時間は通常の1時間あたりの賃金が、40時間を超えた3時間については割増賃金が支給されます。
この法定外休日出勤に対する時間外労働手当も休日出勤手当というケースもありますが、法律上は違います。
なお企業は手当を支給する義務があり、違反した場合には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。 -
(3)管理職は休日出勤手当の支給対象外
労働基準法の「管理監督者」に当たる労働者は、労働時間や休日に関する規定の適用対象外です。そのため原則として休日出勤手当や時間外労働手当は支給されません。
ただし「部長」などという肩書でも実態はヒラ社員という、通称「名ばかり管理職」の場合は、実情に即して手当が支給される可能性があります。名ばかり管理職に該当する方で各手当が未支給という場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。
2、休日出勤手当の割増率と基本的な計算方法
休日出勤手当がきちんと支給されているかどうかを判断するために、まずは自分で手当の額を計算してみましょう。法定休日と法定外休日それぞれの基本的な計算方法をご紹介します。
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(1)法定休日の手当の計算方法
法定休日の休日出勤手当の計算式は以下の通りです。
「基礎賃金×割増率(35%以上)×労働時間」
基礎賃金とは、1時間あたりの賃金のことです。次の式で求められます。
「月の所定賃金額 ÷ 1か月あたりの平均所定労働時間」
1か月あたりの労働時間は、次の式で算出できます。
「(365日 − 年間所定休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月」
では実際に計算してみましょう。たとえば基礎賃金が1800円で8時間休日出勤した場合の手当は、次のように求めます。
1800円 × 1.35 × 8 = 1万9440円
なお休日出勤で深夜労働もした場合には、深夜労働の割増分(25%以上)も適用されます。そのため割増率は「休日労働35%以上 + 深夜労働25%以上 = 60%以上」です。 -
(2)法定外休日の手当の計算方法
法定外休日の割増率は、原則として「1日8時間、週40時間」を超えた部分について25%以上です。計算式は以下の通りです。
「基礎賃金 × 割増率(25%以上)× 労働時間」
たとえば基礎賃金が1800円、すでに週5日8時間働いていて、法定外休日に8時間働いたとすると、8時間が時間外労働です。そのため手当は以下の通りです。
1800円 × 1.25 × 8 = 1万8000円
時間外労働で深夜労働をした場合には、その時間について割増分(25%以上)が加算されます。そのため割増率は「時間外労働25%以上 + 深夜労働25%以上 = 50%以上」です。
3、代休や振替休日を取得した場合
休日出勤をする際には、振替休日や代休を取得することも多いでしょう。両者は混同されがちですが、手当が支給されるかどうかで大きな違いがあります。
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(1)振替休日には手当が支給されない
法定休日に出勤することが決まり、事前に別の日に「振替休日」を設定していた場合、休日出勤手当は支給されません。
そもそも振替休日とは、法定休日に働く代わりに本来の労働日を休みにすることです。つまり休日と労働日を入れ替えるのです。
すると本来は法定休日であった日が通常の労働日という扱いになるため、その日については休日出勤手当が支給されません。
振替休日は必ず休日出勤をする前に手続きしておかなければいけません。また原則として、同じ週内で取得・消化する必要があります。
たとえば「来週の日曜日は展示会があるので、代わりに水曜日を休みにする」といった内容です。
トラブルで休日に働かなければいけなくなったといったケースでは、事前に振り替えができていないため、振替休日は取得できません。 -
(2)代休には手当が支給される
法定休日に出勤し、その後で労働日を「代休」とした場合は、休日出勤手当が支給されます。
代休とは法定休日に働いた後に、代わりに本来は労働日であった日を休みにすることです。
たとえばスタッフが急病で欠勤したため、呼び出しを受けて急きょ休日に働いたといったケースです。
振替休日とは違って、事前に休日と労働日の入れ替えをしていません。そのため代休を取っても休日出勤した事実は変わらないため、休日出勤をした日には35%以上の割増賃金が適用されます。
なお実際の支給の際には、代わりに休みになった労働日の賃金が差し引かれます。
4、休日出勤手当の請求には時効がある
支給されている休日出勤手当や残業代に疑問があっても、会社に問い合わせがしづらく、曖昧なままにしている方もいるでしょう。ですが請求には時効があるため注意が必要です。
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(1)休日出勤手当、残業代の時効は3年
未払いの休日出勤手当や残業代の請求には時効があります。
以前は「2年」でしたが、民法改正により令和2年4月以降に発生した分については「3年」です。改正前に発生していた分は2年が適用されます。
休日出勤手当など未払い賃金は退職後でも請求可能です。時効が過ぎてしまうと原則として請求できなくなるため、早めに請求しましょう。 -
(2)請求は証拠が大事
未払いの手当を請求するためには、証拠が欠かせません。タイムカードや勤務記録、給与明細、就業規則、上司とのやりとりメールなど、未払いの事実と金額計算の根拠となるものを集めましょう。
証拠をもとにまずは会社に直接交渉し、支払いを求めます。交渉が決裂した場合には、裁判なども検討しましょう。
会社との交渉や裁判を労働者が1人で行うのは簡単ではありません。まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士は証拠の収集方法をアドバイスしてくれるほか、会社との交渉の代行もしてくれます。労働者が直接交渉しても会社が取り合ってくれない場合でも、弁護士が連絡すれば一気に解決することは珍しくありません。裁判になった場合にもサポートしてくれます。
5、まとめ
休日出勤手当は法定休日か法定外休日か、深夜勤務かどうかなどで計算方法が大きく違ってきます。給与明細を見ただけでは、正しく支給されているか判断するのは難しいでしょう。
未払いの可能性がある場合には、どうぞベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスにご相談ください。弁護士がお話の内容や資料から判断をし、未払いがある場合には会社への請求をお手伝いいたします。時効になる前に、お早めにご連絡ください。
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