不当なクビ宣告とは? 正社員が知っておきたい解雇への対処法
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平成27年(2015年)の国勢調査によると、同年時点での千葉市内における労働力人口は45万623人で、5年前の平成22年(2010年)と比較して7502人の減少となっています。
新型コロナウイルスの影響により、従業員に対するクビ宣告が行われるケースが急増しています。もし景気悪化の局面で、突然退職を余儀なくされた場合、生活資金の確保が難しくなってしまうでしょう。
しかし、労働者を解雇するための法律上のハードルは非常に高いため、クビ宣告が違法である可能性は大いにあります。
もし会社から突然クビ宣告を受けてしまった場合は、弁護士に相談して適切な対処を行いましょう。
この記事では、会社からクビ宣告を受けてしまった正社員の方がとるべき対処法について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「千葉市の経済・産業統計データ集 令和元年度版」(千葉市)60頁)
1、解雇とは? 3種類の解雇について
解雇には、大きく分けて普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の3種類があります。
それぞれについて法律上の要件が異なるので、解雇の有効性を判断するためには、まずどの種類の解雇が問題となっているのかを確認することが必要です。
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(1)普通解雇
普通解雇とは、懲戒解雇・整理解雇以外の通常の解雇を意味します。
会社の就業規則では、解雇の事由を定めなければならないとされています(労働基準法第89条第3号)。
この就業規則上の解雇事由に基づいて行われるのが普通解雇です。
解雇事由の例としては、以下のものが挙げられます。- 病気やけがによる就業不能
- 成績不良
- 能力不足
- 協調性の欠如
上記の各事由は必ずしも、就業規則上の労働者の義務に直接違反するものではありません。
しかし、これらの各事由が存在する場合、労働者は会社に対して十分な労働を提供することが困難な状態にあるといえます。
そのため、労働者に解雇事由が生じた場合には、会社が労働者を解雇する(普通解雇)ことが認められ得るのです。 -
(2)懲戒解雇
懲戒解雇とは、就業規則違反などの非違行為をした労働者に対する制裁として行われる解雇を意味します。
懲戒解雇は、就業規則において定められる懲戒処分のうち、もっとも重いものとして位置づけられます。
会社が労働者を懲戒解雇する場合、就業規則に定められた懲戒事由が存在することが必要です。
それに加えて、従業員の非違行為に対する非難の程度に対して、懲戒解雇というきわめて重い処分を行うことが妥当なのか、つり合いが取れているのかという点が厳しく審査されます。 -
(3)整理解雇
整理解雇とは、会社の業績不振などを原因として、人員整理の目的で行われる解雇を意味します。
整理解雇の場合、労働者には基本的に責任がありませんので、解雇の要件は非常に厳しくなります。
一般的には、整理解雇を行う際には、以下の4要件を満たす必要があるとされています。- ①人員整理の必要性
- ②解雇回避努力義務の履行
- ③被解雇者選定の合理性
- ④適正な手続き
- ①人員整理の必要性
2、突然のクビ宣告は適法? 違法? それぞれの具体例・理由
会社から突然クビ宣告を受けた場合、上記の解雇要件を満たしているかどうかによって、解雇が適法なのか違法なのかが分かれます。
さらに、解雇全般には「解雇権濫用の法理」(労働契約法第16条)が適用され、客観的合理性・社会的相当性を欠く解雇は違法、無効です。
上記を踏まえ、以下では、適法な解雇と違法な解雇の具体例をそれぞれ紹介します。
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(1)適法な解雇の具体例
<ケース①>
「会社の運転資金を横領した正社員を、経営層が中心となって十分に審査を重ねた後、就業規則の懲戒規定に従って懲戒解雇した。」
会社の資金を横領する行為は、刑法上の犯罪に該当するため、重い非難に値します。
そのうえで、会社は懲戒解雇を行う前提として十分な審査を重ねた後に就業規則の懲戒規定を適用しているため、解雇の客観的合理性・社会的相当性の点でも問題ないと考えられます。
したがって、この場合の懲戒解雇は適法と判断される可能性が高いでしょう。
<ケース②>
「契約社員がプライベートで自動車の運転中の交通事故によって全身まひの状態になり、就労不能となってしまった。就業規則上の解雇事由に基づき、契約期間の途中で解雇した。」
全身まひで就労不能とあっては、労働者が今後会社に対して労働を提供することは不可能なので、解雇もやむを得ないといえるでしょう。
プライベートの交通事故が原因ですので、労働基準法上の解雇禁止規定も適用されません。 -
(2)違法な解雇の具体例
<ケース③>
「大事なミーティングに30分遅刻した正社員を、就業規則違反の懲戒事由に基づき、懲戒解雇した。」
深刻な遅刻癖があり、何度注意しても直らないというのであれば別ですが、ミーティングに一度遅刻しただけで懲戒解雇するのは、あまりにも処分が重すぎると言わざるを得ません。
したがって、解雇の客観的合理性・社会的相当性を欠き、違法、無効と判断される可能性が高いでしょう。
<ケース④>
「派遣先がなかなか見つからないので、能力不足を理由として、派遣元が派遣社員を解雇した。」
派遣社員の派遣先を見つけるのは、派遣元の責務です。
派遣先が見つからないことについて、派遣社員に明らかな責任がある場合は別として、漠然とした能力不足を理由に、派遣社員に責任を転嫁することは許されません。
このような解雇は、たとえ就業規則上の解雇事由に当たるものとして行われたとしても、客観的合理性・社会的相当性を欠き、違法無効と判断される可能性が高いでしょう。
3、クビ宣告されたらとるべき対処法
正社員としての立場で、突然会社からクビ宣告を受けてしまった場合、泣き寝入りをすることなく、毅然(きぜん)として以下の対応を取りましょう。
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(1)解雇理由証明書の交付を求める
労働者側としては、会社が主張する解雇理由を明確にしたうえで、それに対する反論を検討する必要があります。
そのためには、会社に対して解雇理由証明書を請求しましょう(労働基準法第22条第1項)。
単に解雇する旨が記載されている「解雇通知書」とは異なり、解雇理由証明書には、解雇の理由が具体的に記載されることになります。
労働者側からの解雇理由証明書の交付請求は、使用者側は拒否することができませんので、解雇を言い渡されたらすぐに交付を請求しましょう。 -
(2)解雇予告手当の支払いを求める
会社が労働者を解雇しようとする場合には、原則として以下のいずれかの対応を取らなければなりません(労働基準法第20条第1項、第2項)。
- ①30日前に解雇の予告をする
- ②30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う
- ③解雇予告期間の日数と解雇予告手当の支給日数を合計30日以上とする
もし30日前の解雇予告が行われていなかった場合には、上記のルールに従い、会社に対して解雇予告手当の支払いを求めることが可能です。
- ①30日前に解雇の予告をする
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(3)解雇の有効性を争う
解雇が違法の疑いがある場合は、会社に対して解雇の無効を訴えたうえで、従業員としての地位確認を請求しましょう。
会社に対して具体的な請求を行う際には、弁護士への相談をおすすめいたします。
4、クビ宣告されてしまった場合の相談先
会社から不当なクビ宣告を受けてしまった場合、労働者の方が相談すべき窓口としては、労働基準監督署と弁護士の2通りが考えられます。
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(1)労働基準監督署
労働基準監督署は、管轄地域に所在する企業において、労働基準法違反の行為がなされていないかを監督する権限を有しています。
労働者が労働基準監督署に対して、労働基準法違反の事実を申告した場合、申告をきっかけとして、労働基準監督署から会社に対する行政処分や行政指導が行われる可能性があります。
ただし、労働基準監督署はあくまでも、規制権限を通じて間接的に労働者の権利を守るに過ぎません。
また、申告の内容によっては、必ずしも具体的なアクションを起こしてくれるとは限らない点にも注意が必要です。 -
(2)弁護士
会社に対して解雇の無効を主張する、損害賠償や未払い賃金を請求するなど、労働者としての具体的な権利を実現したい場合には、弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士は、依頼者の味方として、会社との交渉・労働審判・訴訟などの手段を適切に使い分けつつ、依頼者の権利の実現を強力にサポートします。
また、具体的な行動を迅速にとってくれる点、面倒な手続き・準備をすべて任せられる点も弁護士の強みといえます。
5、まとめ
会社から突然「クビ宣告」を受けてしまったら、途方に暮れてしまうのも無理はありません。
しかし、法律上の解雇の要件は厳しいため、会社側の手続きや解雇理由に違法の不備がある可能性は高いといえます。
そのため、法律上の適切な対処法を講じれば、従業員としての地位の回復や、会社から金銭的な保証を得られたりする可能性があります。
もし会社から突然クビ宣告を受けてしまった場合は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。労働問題の専門チームが親身になって、依頼者の労働者としての権利実現を後押しいたします。
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