盗品等関与罪とは? 盗品等有償譲受罪などの詳細と成立要件や刑罰
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- 盗品等関与罪
令和6年11月、盗難車と知りながら車を保管した容疑で千葉市内に住む男が逮捕されたという報道がありました。
自身が直接盗んだ場合、窃盗罪で逮捕されることはもちろんですが、この事件のように、他者が盗んだ物を保有・保管した、有償や無償で譲り受けたなど、盗品に関わった場合、逮捕される可能性があります。
本コラムでは、盗品に関わった際に問われる「盗品等関与罪」について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
1、盗品等関与罪の種類と刑罰
盗品等関与罪は、盗まれた物に関わった場合に問われる罪の総称で、事件での関与の仕方によって罪名が変わります。
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(1)盗品等無償譲受罪
盗品等を無償で譲り受けた場合には、盗品等無償譲受罪にあたります。
法的な表現では、無償で交付を受け、取得することで処罰の対象となります。
交付を原因として取得すれば成立するため、違法ではない贈与を受けた場合でも、罪は免れられません。
有罪となった場合は、3年以下の懲役が科せられます。 -
(2)盗品等有償譲受罪
盗品等を有償で譲り受けた場合、盗品等無償譲受罪にあたります。
有償、つまり売買を原因として取得すると処罰の対象になります。
有罪の場合の刑罰は、10年以下の懲役および50万円以下の罰金となり、懲役および罰金のため、懲役と罰金の両方が科せられることがあります。 -
(3)盗品等運搬罪
盗品等を運搬した場合には、盗品等運搬罪にあたります。
この運搬とは、場所的に移動することを指し、報酬の有無は問いません。
この際に、盗品等を被害者へと返す目的で運搬した場合でも、罪に問われるのかという問題があります。
この場合、犯人から依頼を受け有償で運搬した場合は罪に問われますが、自ら被害者への返還を決意し、無償で運搬した場合は、罪に問われないことになります。
有罪になった場合の刑罰は、10年以下の懲役および50万円以下の罰金です。 -
(4)盗品等保管罪
盗品等を保管した場合は、盗品等保管罪にあたります。
保管が成立するのは、委託を受けて管理した場合で、報酬の有無は問いません。
盗品等保管罪で問題となるのは、盗品だと知らずに保管したケースです。
たとえ有償であったとしても、盗品だと知らされずに委託を受け、保管した場合は罪に問われません。
一方で、はじめから盗品等だと知らされていた場合や、保管を受けたあとで盗品等だと発覚した場合は、処罰の対象となります。
有罪になると、10年以下の懲役および50万円以下の罰金が科せられます。 -
(5)盗品等有償処分あっせん罪
盗品等の有償処分をあっせんした場合、つまり転売を行ったり、質屋に出したりなど、処分を仲介すると盗品等有償処分あっせん罪にあたります。
あっせん行為に報酬の有無は関係ありません。
また、あっせん行為のみで成立するため、実際に売買などが成立しなかった場合でも処罰の対象となります。
有罪になった場合は、10年以下の懲役および50万円以下の罰金が科せられます。
2、盗品等関与罪が成立する要件
盗品等関与罪が成立する要件について確認しましょう。
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(1)対象が「盗品等」であること
盗品等関与罪の対象物は、窃盗や詐欺などの犯罪により不正に取得された金銭や品物などの盗品等を指します。
また、財物の形態に制限はないので、金品だけでなく、所有権の移転に登記を必要とする不動産も対象です。
なお、財産犯罪を実行した本人が、14歳未満だった場合、刑事責任能力がないため本人は処罰を受けません。
たとえば、13歳の少年が商品を万引きしても、刑事責任がないため、窃盗罪としての刑罰は科せられないことになります。
ただし、その少年から譲り受け・運搬・保管の委託などを受けた者が14歳以上の場合は、刑事責任が生じるため、盗品等関与罪の成立を免れられません。 -
(2)盗んだ本人ではない者の関与であること
盗品等関与罪は、本犯(財産犯罪を実行した本人)ではない者を対象としています。
本犯が盗品等を無償・有償で他人に譲り渡したり、保管・運搬したりといった行為は処罰の対象に含まれません。 -
(3)盗品等であるという認識があること
盗品等関与罪の成立には、故意が求められます。
故意がない、つまり盗品等だとは知らなかったという場合は盗品等関与罪が成立しません。
ただし、「盗品かもしれない」という認識をもちながら、譲り受けや保管などをした場合は、受け入れたとみなされるため、未必の故意が成立し、処罰の対象になります。
盗品等関与罪に問われる者にとって、いつ、どこで、誰が被害に遭い、誰が犯人なのかを知っている必要はありません。
この点が問題になるときは、盗品だとは知らなかったと弁明したくなるでしょう。
しかし、知らなかったとどれだけ主張したとしても、本犯との関係性や本犯の素行、財物の性質や対価などから、知っていたはずだと判断されてしまえば、罪を免れることはできません。
3、親族からの依頼では処罰されない? 親族間の特例とは
たとえば、家族から、隠し持っていてほしいと依頼を受け、盗品等を保管したなどのケースでは、親族間の特例として、親族相盗例の適用を受けます。
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(1)盗品等関与罪における親族間の特例
刑法第257条には、親族等の間の犯罪に関する特例が定められています。
本犯と配偶者・直系血族・同居の親族・同居親族の配偶者との間で行われた盗品等関与罪は、その刑を免除するという規定です。
配偶者とは、婚姻関係を結んでいる相手を指します。
内縁関係や事実婚の場合、法律上の婚姻関係が存在しないので、親族間の特例を受けません。
直系血族とは、本人を中心として直接の親子関係がある者なので、父母・祖父母・子どもなどが該当します。
親族とは6親等以内の血族、3親等以内の姻族です。
同居している兄弟姉妹・叔父・叔母・おい・めい・配偶者の父母などが該当します。 -
(2)盗品等関与罪で親族間の特例が適用されるケース
たとえば、窃盗をした本人が、親に盗んだ金品の運搬を依頼した場合、本人は窃盗罪による処罰を受けますが、親族間の特例が適用されるため、本来は盗品等運搬罪に問われるべき親は刑を免除されます。
ただし、運搬委託を受けた親が、ひとりでは運搬できないと判断し、友人に事情を説明したうえで協力を依頼した場合、親族間の特例を受けない友人は盗品等運搬罪に問われます。
いずれにせよ、盗品等に関与した容疑をかけられてしまったときは、弁護士に相談することをおすすめします。
お問い合わせください。
4、盗品等関与罪で逮捕された! 弁護士に期待できるサポート内容
盗品等関与罪の容疑をかけられ、逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。
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(1)早期釈放にむけたサポート
逮捕されると、警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内、合計で最長72時間以内の身柄拘束を受けます。
さらに、検察官の請求によって勾留が許可されると、身柄拘束が20日間延長されるため、身柄拘束の期間は最長で23日間です。
身柄拘束の期間が長引き、社会から隔離された状態が続けば、会社や学校、家族などとの関係が悪化してしまう可能性もあります。
弁護士に依頼することで、本犯の被害者との示談交渉だけでなく、早期釈放にむけ、検察官や裁判官にはたらきかけることが可能です。
早期に被害者との示談が成立すれば、検察官が不起訴処分を下す可能性が高まるため、早期釈放が期待できます。 -
(2)処分の軽減を目指したサポート
財産犯罪の本犯ではなくても、盗品等に関与した場合、厳しい刑罰が下される可能性があります。
処分の軽減を目指すには、損害を被った本犯被害者への謝罪と弁済が重要になります。
弁護士に示談交渉を依頼して、事件の解決を目指すのが最善策です。
また、本当に盗品等だということを知らなかった場合でも、さまざまな事情から、知らなかったはずはないと、容疑をかけられてしまうケースもあります。
弁護士に依頼すれば、盗品等であることの認識を否定するための証拠収集や、捜査機関・裁判官へのはたらきかけが期待できます。
5、まとめ
窃盗罪や詐欺罪といった財産犯による被害品を、犯人から無償・有償で譲り受けたり、保管や運搬などを委託されたりした場合、「盗品等関与罪」に問われます。
犯行そのものに関与していなくても逮捕や厳しい刑罰の対象となり、容疑をかけられてしまった場合は逮捕されてしまう可能性があります。身柄を拘束されてしまうと長期にわたり日常に戻れなくなる可能性が高いため、なるべく早く対策をとる必要があるでしょう。
盗品等関与罪の容疑をかけられてしまい、逮捕されるのではないかと不安を感じている場合、お早めにベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士とスタッフ一同が、早期釈放や重すぎる処分の回避を目指して、全力でサポートします。
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