偽ブランド品・コピー品販売と所持|知らなかったでは済まないリスク

2024年08月15日
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偽ブランド品・コピー品販売と所持|知らなかったでは済まないリスク

千葉市を管轄する横浜関税が公表する資料によると、令和5年中に横浜税関だけで12485件、52759点もの偽ブランド品や海賊版などの知的財産侵害物品の輸入差し止めを行ったと報告しています。ネットショッピングの普及により、実際に手に取り正規品か偽造品かを確認しづらいなどの背景もあるのか、差し止め件数自体は昨年比120%となりました。

偽ブランド品やコピーの製造や販売は言うまでもなく犯罪です。では、偽物であることを知らずに販売した場合や購入して所持してしまった場合は罪に問われるのでしょうか。また、警察などの取り締まりを受けることになってしまった場合、どう対応すればいいかについてまで、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が偽ブランド品に関する法規制について説明します。


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1、偽ブランド品に関する法律について

偽ブランド品を製造・販売した場合に問われる罪としては次のようなものがあります。

  1. (1)商標法違反

    まず考えられるのは商標法違反です。
    企業やブランドのロゴや文字などには商標権が認められています。これは、その企業が努力して築いてきた商品への信頼そのものであり、その信頼やブランド性を守ることで、商標の権利者である会社業務上の信用を維持し、さらには、その商標を信用して商品を買い求める消費者や市場を保護することも目的としています(商標法1条)。

    長年の努力と時間やお金をかけて築いてきた「ブランドの価値」を、第三者がただ乗り(フリーライド)することは許されないというわけです。

    具体的に問題となるのは、他人の商標を利用した偽ブランド品やレプリカ品、そっくりなコピー商品を作成して販売する行為が対象となります。

    なお、ブランドのロゴそのものではなく、一部をもじった商品の販売や、別の商品の包装紙にブランドの商標を付ける行為も、「みなし侵害行為」として違法になります。商標法違反の刑罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方です(商標法78条)。みなし侵害行為の場合でも、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金またはその両方が併科されます(同78条の2)。

    さらに、上記は個人が商法表違反を犯した場合の罪です。個人ではなく、法人の業務に関し、法人代表者やその従業者等が商標権侵害行為をした場合は、行為者自身に個人としての上記の刑罰が科されることに加え、さらに、法人に対しては3億円以下の罰金刑が科されます(商標法82条)。法人にはかなり重い刑罰が予定されていることがわかります。

  2. (2)不正競争防止法違反

    偽ブランド品の販売は、不正競争防止法違反に該当する可能性もあります
    同法は、一般に広く認知された他人の商品等を模倣することで、消費者に対して他の商品と混同させることを禁止する目的の法律です。商標登録していない商品についても処罰の対象となる点が特徴で、5年以下の懲役または500万円以下の罰金刑あるいはその併科が予定されています。

  3. (3)詐欺罪

    さらに、偽ブランド品の販売は、購入者に対する詐欺罪(刑法246条)に該当します。偽ブランド品を正規品であると偽り、本物に見せかけて顧客をだまして対価を払わせると詐欺罪が成立します。刑罰は10年以下の懲役で、罰金刑はありません。このように、偽ブランド品の販売は、さまざまな犯罪に該当するリスクの高い行為です。

2、偽ブランド品を購入・所持だけであれば逮捕されない?

  1. (1)偽ブランド品を購入する行為は違法になる?

    偽のブランド品だと知らずに買った場合は、もちろん罪にはなりません。むしろ、だまされたわけですから、詐欺の被害者ということになります。

    また、偽物だと知りつつ購入したという場合でも、個人でその商品を使用するだけなら商標法違反とはなりません。ただし、その購入の目的が、それを第三者に売りつけて利益を得るための「仕入れ」である場合には、譲渡等目的での所持行為となり、商標法違反に該当します。

  2. (2)偽ブランド品を所持している場合は?

    偽ブランド品を手元に持っているだけでは他人の商標の侵害には至りません。自分で使っていても問題はありません。

    ただし、偽ブランド品を、フリマアプリやネットオークションで販売するために、所持しているのならば、他人の商標権を侵害する準備行為にあたり、商標法違反に該当します(商標法37条6号)。この場合、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(同法78条の2)。

3、偽ブランド品だと知らずに販売してしまった場合は?

偽ブランド品を売ってしまった場合にはいくつかのケースがあります。ケースごとに違法行為にあたるかどうかを検討しましょう。

  1. (1)偽ブランド品だと知らずに販売してしまった場合

    商標法違反でも、不正競争防止法違反でも、詐欺行為であっても、偽ブランド品を販売したために刑罰の対象になるには、故意があること、つまり偽ブランド品だと知りながらあえてそれを販売するなどして侵害したことが条件となります。

    したがって、その商品が偽ブランドであると知らずに本物だと信じて販売した場合は、故意が認められず、犯罪が成立しません。

    ただし、偽ブランドだとは知らなかったという主張が通ることはそう簡単ではありません。それなりの証拠や説得的な経緯が必要となりますので、無罪主張をする場合は、必ず弁護士に相談したほうがいいでしょう。

  2. (2)偽ブランド品だと知っていたが偽ブランド品であることを隠して売った場合

    偽ブランド品であることを隠して消費者に売りつける行為は、相手をだまして商品を売ることと同じです。

    消費者は、有名ブランドの正規商品だと信じて、それに応じた対価を支払うわけですから、実際には偽造品だとわかっていたら購入しなかった可能性が十分にあります。

    この場合は、消費者に対する詐欺行為として、民法上の詐欺行為にあたり、また、刑法の詐欺罪にも該当します。もちろん、商標法、不正競争防止法にも違反するれっきとした犯罪行為です。

  3. (3)偽ブランドだと客に告知して売った場合

    偽造品業者が、偽物であることを明示して売るケースもあります。たとえば、模倣品、レプリカ、コピー商品だと記載して販売する場合です。

    この場合は、消費者側が納得したうえで購入するわけなので問題ないと考える人もいます。しかし、この場合でも違法には変わりありません。偽ブランドの コピー品を販売すること自体がそもそも違法行為です。

    したがって、事前に相手に伝えて同意を得たとしても、販売者の責任は厳しく追及され、違法行為としての処罰の対象になります

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4、逮捕された場合に弁護士がサポートできること

偽ブランド商品の製造や偽造品販売行為に加担しているとある日突然逮捕されることがあります。また、自宅に突然警察官がやってきて家宅捜索を受けるときもあります。

家宅捜索では、事件に関連があると思われるものはいや応なしに差し押さえられてしまいます。商品はもちろん、通帳などの金銭に関係する者、パソコンやスマートフォン、手帳なども、差し押さえの対象となることが多いでしょう。この時点で、できるだけ早く弁護士を呼んで対応を考えるべきです。

逮捕された場合には、弁護士は次のような流れで対応を進めます。

  1. (1)被害者への謝罪と弁償

    偽ブランド品の製造や販売で逮捕された場合、まず弁護士がやることは、被害者への謝罪と弁償の対応です。

    商標法違反では、商標権をもつ会社と偽ブランド品を購入した買い手が被害者です。したがって、これら両方の被害者に、謝罪と被害弁償を行う必要があります。商標法違反は、いわゆる経済犯ですから、経済的利益をしっかりと弁償することがとても重要です。

  2. (2)弁護士による被害者との示談交渉

    刑事事件でもっとも重要なことは、被害者との示談の成立です。示談ができれば、加害者にとってかなり有利な事情となります。

    とはいえ、偽ブランド品に関する犯罪では、被害者である商標権者は大手ブランド会社の可能性が高く、そう簡単に示談はしてくれない可能性があります。そういった場合は、弁護士の交渉力と、示談以外の方法で被害を弁償する贖罪(しょくざい)寄付や供託などの方法で、加害者に有利となる選択肢を選んでいくことが可能です。

  3. (3)不起訴を目指す

    被害者との示談が早急にできれば、逮捕の回避や逮捕されても不起訴で終わらせる可能性が出てきます。ただし、逮捕拘留中に不起訴を目指すには、時間との戦いになります。勾留期間は最長でも20日間と決まっており、その間に起訴される不起訴で終わるかが決まってしまいます。ということは、このわずか20日の間に、被害者と示談を進めて結果を出すには、かなり示談交渉や商標違反事件への経験が豊富な弁護士が対応する必要があります。

  4. (4)起訴後は罰金刑・執行猶予の獲得

    仮に起訴された場合、できるだけ軽い処罰で終わらせることを目指します。具体的には罰金刑か、執行猶予を目指し、実刑を回避したいところです。

    ただし、偽ブランド品に関する商標法違反等は、初犯でも実刑になる可能性がある類型事件です。実刑を避け、罰金刑か執行猶予判決を獲得するためには、早めに弁護士に依頼し、被害者に適切な被害弁償を提示しつつ、示談を進めることが何よりも大事です。

    また、本人の仕事環境や監督者からの支援を得ての、全方位からのしっかりとした弁護活動が、裁判の結果に影響します。

5、まとめ

軽い気持ちで偽ブランド品に関わってしまった場合、逮捕されてからその罪の重さに驚いたという方は少なくありません。商標権をはじめとした知的財産権は法律で厚く保護されており、侵害すると重い刑罰が待っているのです。偽ブランド品やコピー品関連で逮捕の不安がある方は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

事情によって刑事手続きの流れが異なります。商標法違反や知的財産侵害関連だけでなく刑事事件についての知見がある弁護士に相談すれば、ある程度今後の見通しを聞くことができます。さらに、適切な弁護活動についてもアドバイスを受けることができ、ご不安を軽減することができるでしょう。

ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスでは、偽ブランド品の取り扱いによる商標法違反、不正競争防止法違反、そして詐欺事件のいずれについても、対応の経験が豊富な弁護士が在籍し、ご相談を速やかに承っています。刑事事件はスピードが第一です。少しでもご不安がある方は、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています