従業員を解雇する手順|解雇の要件や種類、注意点を弁護士が解説

2023年08月21日
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従業員を解雇する手順|解雇の要件や種類、注意点を弁護士が解説

従業員を解雇するためには、解雇要件を満たすか否かを検討したうえで、解雇予告等の手順をふまなければいけません。

安易な解雇は違法となる可能性が高いので、従業員を解雇する際には、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

本コラムでは、従業員を解雇する際の要件や手順などについて、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。

1、従業員を有効に解雇するための要件

会社が一方的に従業員を解雇する場合は、以下の要件を満たさなければなりません。
要件を満たしていないにもかかわらず行われた解雇は、不当解雇として無効となることに注意しましょう



  1. (1)解雇の種類に応じた解雇要件を満たしていること

    後述するように、解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の三種類があり、それぞれ異なる解雇要件が存在します。

    使用者が従業員を解雇する際には、それぞれの解雇の種類に応じた解雇要件を満たさなければならないのです

  2. (2)法律上の解雇禁止事由に該当しないこと

    労働基準法をはじめとする労働関係の法律では、使用者による従業員の解雇が禁止される場合が定められています。

    たとえば、以下のいずれかに該当する解雇は禁止されており、不当解雇として違法・無効となるのです。

    ① 従業員の国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)

    ② 業務上負傷し、または疾病にかかった従業員が療養のために休業する期間、およびその後30日間に行われる解雇(同法第19条第1項)

    ③ 女性従業員が産前産後休業を取得している期間、およびその後30日間に行われる解雇(同法第19条)

    ④ 労働基準法の規定に従って解雇の予告をせず、または解雇予告手当を支払わずに行われる解雇(同法第20条第1項)

    ⑤ 労働基準監督署への申告を理由とする解雇(同法第104条第2項)

    ⑥ 労働組合員であること、労働組合に加入し、もしくは結成しようとしたこと、または労働組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇(労働組合法第7条第1号)

    ⑦ 労働委員会に対する不当労働行為の救済申立て、中央労働委員会に対する再審査の申立てなどを理由とする解雇(同条第4号)

    ⑧ 以下のいずれかを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条第2項、第3項)
    • (a)婚姻、妊娠、出産
    • (b)女性従業員が健康管理措置を求め、または当該措置を受けたこと
    • (c)妊娠を理由とする就業制限、軽易な業務への転換、時間外労働・休日労働・深夜労働の制限の請求、またはこれらの措置を受けたこと
    • (d)産前産後休業の請求、取得
    • (e)育児時間の請求、取得
    • (f)妊娠または出産に起因する症状により、労務の提供ができないこともしくはできなかったこと、または労働能率が低下したこと

    ⑨ 育児休業・介護休業の申出・取得を理由とする解雇(育児・介護休業法第10条、第16条)
  3. (3)解雇権の濫用に当たらないこと

    解雇要件を満たし、かつ解雇禁止に該当しないとしても、解雇権の濫用にあたる場合は不当解雇として無効となります。

    解雇権の濫用にあたるのは、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合です(労働契約法第16条)。これを「解雇権濫用の法理」といいます

2、解雇の種類|懲戒解雇・整理解雇・普通解雇

以下では、三種類も解雇についてそれぞれの特徴や条件を解説します。

  1. (1)懲戒解雇

    「懲戒解雇」とは、従業員の非違行為を理由に行われる解雇です。
    具体的には、「犯罪行為をした」「会社の資金を横領した」「無断欠勤を何度も繰り返した」などの行為をした従業員が懲戒解雇の対象となります。

    懲戒解雇をするためには、就業規則に懲戒事由が定められており、対象となる従業員が懲戒自由に該当することが必要になります

  2. (2)整理解雇

    「整理解雇」とは、会社の経営不振などを理由として、人員整理を目的に行われる解雇です。

    整理解雇をするためには、以下の四つの要件を総合的に考慮して、解雇が客観的に合理的かつ相当と認められる必要があります

    ① 整理解雇の必要性
    整理解雇をしなければ経営が立ち行かなくなるなど、解雇をする高度の必要性が認められなければなりません。

    ② 解雇回避努力義務の履行
    役員報酬の削減、希望退職者の募集、新規採用の抑制など、さまざまな観点から解雇を回避する努力を払うことが求められます。

    ③ 被解雇者選定の合理性
    整理解雇の対象者を選定するための合理的な基準を策定したうえで、その基準を適切に適用して対象者を選ぶ必要があります。

    ④ 手続きの妥当性
    対象となる従業員本人や労働組合に対して、整理解雇の必要性を十分に説明したうえで、納得してもらうように試みる必要があります。
  3. (3)普通解雇

    「普通解雇」とは、懲戒解雇と整理解雇以外の解雇を意味します。

    普通解雇をするためには、労働契約または就業規則で解雇事由が定められており、対象となる従業員がそのいずれかに該当することが必要です

3、従業員を解雇する際の手順

会社が従業員を解雇する際には、以下の手順で検討や手続きを行いましょう。



  1. (1)解雇要件を満たすかどうか検討する

    解雇の種類に応じた解雇要件を満たしていない場合、不当解雇として無効となります。
    また、労働基準法等によって解雇が禁止されている場合もあります。
    さらに、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、解雇権の濫用として違法・無効となるのです。

    従業員を不当解雇すると、後に従業員との間で深刻なトラブルが発生する可能性があります
    実際に解雇を決行する前に、上記の各観点から、解雇要件を満たすかどうかを慎重に確認しましょう。

  2. (2)解雇の予告または解雇予告手当の支払いを行う

    従業員を解雇する際には、原則として30日前に解雇を予告するか、または30日以上の平均賃金(=解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条第1項)。
    なお、解雇予告手当を支払った場合は、解雇予告期間を1日分の平均賃金当たり1日短縮することができます(同条第2項)。

    解雇予告をせず、解雇予告手当も支払わずに行われた解雇は違法・無効となります。
    従業員を解雇する際には、必ず、解雇予告または解雇予告手当の支払いのいずれかを行いましょう

    なお、解雇予告をする際には、その証拠が確実に残るように、メールなどとあわせて内容証明郵便でも書面を送付することをおすすめします。

  3. (3)解雇通知を交付する

    解雇当日になったら、対象となる従業員に対して解雇通知を交付します。
    解雇通知についても、解雇予告通知と同様に、メール等と内容証明郵便を併用することをおすすめします。

    なお、従業員から請求された場合には、会社は従業員に対して解雇理由証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条第1項)。
    合理的かつ相当な解雇理由を提示できるように、あらかじめ十分な検討を行っておきましょう

4、従業員を解雇する際の注意点

会社が従業員を安易に解雇すると、労使紛争が発生した際に不利な立場に置かれてしまいます。
また、仮に解雇が適法であったとしても、解雇紛争は長期化しやすい傾向にあるという点にも注意が必要です。

  1. (1)安易な解雇は違法の可能性が高い|退職勧奨も検討すべき

    労使関係において不利な立場に置かれやすい従業員を保護するため、解雇権濫用の法理(労働契約法第16条)はきわめて厳格に適用されています。
    そのため、会社が従業員を安易に解雇すると、不当解雇が認定される可能性が非常に高いのです。

    不当解雇が認定されると、会社は原則として従業員の復職を認めなければなりません
    仮に合意退職で和解しても、多額の退職金(解決金)を支払わなければならないケースが多いでしょう。
    このような事態を防ぐためには、解雇の適法性について慎重に検討する必要があります。
    また、解雇の形式を回避して、従業員に対して退職勧奨を行うことも有力な選択肢となります。
    上乗せ退職金の支払いなどを求められる可能性があるなどのデメリットも存在しますが、トラブルを回避することを重視するなら、優先度の高い選択肢となるでしょう。

  2. (2)解雇紛争は長期化しやすい|対応は弁護士に相談を

    従業員が不当解雇を主張して争ってきた場合、解雇紛争は長期化する傾向にあります。
    とくに法廷で争うことになった場合には、半年から1年以上の期間、紛争が続くことになるでしょう。

    会社が長期間にわたって解雇紛争を戦うためには、法律の専門家である弁護士のサポートが不可欠です
    できる限り早い段階で弁護士に相談して、万全の準備を整えましょう。

5、まとめ

会社が従業員を解雇する際には、解雇要件を満たしていることを確認したうえで、適切な手順をふむ必要があります。
また、従業員との間でトラブルになった場合にも対応できるように、弁護士に相談して万全の準備を整えましょう。

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