ぼったくりに遭った場合の適切な対処法は? 警察は対応してくれない?
- その他
- ぼったくり
- 対処
犯罪統計のデータによると、令和2年(2020年)中に千葉県内で発生した刑法犯の認知件数は3万4685件で、前年比7108件の減少となりました。
バーやキャバクラなどの飲食店で、いわゆる「ぼったくり」の被害に遭った場合、泣き寝入りせずに、弁護士に相談のうえで法的に理論武装をして対応するという選択肢もあります。悪質な場合などは警察が対応することもありますが、被害をアピールするには証拠の確保が重要になります。
この記事では、ぼったくり被害に遭った場合の適切な対処法について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
1、飲食店におけるぼったくりとは?主なパターン
繁華街の飲食店では、一部で悪質な「ぼったくり」が横行しています。
「ぼったくり」とは、俗に店側が客に対して、不当・法外な料金を請求することを意味します。
ぼったくりにはさまざまなパターンがありますが、そのうち主なパターンは以下のとおりです。
-
(1)事前説明のない追加料金が加算されている
いわゆる「キャッチ」から路上勧誘を受けて店舗へ向かったところ、最終的に当初受けた説明とはかけ離れた料金を請求されるケースがあります。
この場合、当初説明を受けていたコース料金やパッケージ料金などに、「週末料金」「年末年始料金」「テーブルチャージ(席料)」などさまざまな名目で追加料金が加算されていることが多いです。
このように、当初説明しなかった追加料金を上乗せし、請求金額をつり上げるのは、ぼったくり飲食店の常套手段といえます。 -
(2)サービス料として法外な金額を請求される
サービス料も追加料金の一種ですが、ぼったくり飲食店では、サービス料の割合が法外に設定されていることがあります。
たとえば、ホテルなどでもサービス料が設定されるのが一般的ですが、その場合でも飲食代金の10%~20%程度でしょう。
しかし、ぼったくり飲食店では、50%や100%などのサービス料率が設定されているケースもあるようです。
客側が同意していれば問題ありませんが、サービス料については事前説明がないケースも多く、大いに問題がある「ぼったくり」手法といえます。 -
(3)一般的に無料・安価で提供されるサービスに高額の料金が設定されている
一般的な日本の飲食店では、水やおしぼりなどのサービスは無料で提供されています。
また、お通し代なども数百円程度と、比較的安価なことが多いでしょう。
しかし、ぼったくり飲食店では、これらのサービスに対して法外な料金が設定されているケースが多くあります。
特に客に対して断りなくこれらのサービスを提供したうえで、会計の際にはじめて法外な料金設定を明かすというのは、ぼったくり飲食店においてよく見られる典型的な手口です。
2、ぼったくりを規制する法律・条例は?
ぼったくりを規制する法律・条例は一部存在しますが、残念ながら不十分な規制となっているのが実情です。
-
(1)ぼったくり防止条例(一部の都道府県のみ)
東京都や大阪府をはじめとした一部の都道府県では、ぼったくり防止を目的とした条例が制定されています。
(例)東京都の「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取り立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」
しかし、ぼったくり防止条例の適用対象は性風俗店などに限定されており、一般的な飲食店には適用されないケースも多いです。
そのため、ぼったくりを条例によって摘発できるケースは、かなり限定的といえます。 -
(2)ぼったくり=詐欺?
ぼったくりは詐欺なのではないかというイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実際にはぼったくりを詐欺罪(刑法第246条第1項)で摘発することは困難です。
詐欺罪に当たるのは、他人をだまして財物を交付させる行為です。
しかしぼったくりの場合は、店側が客に対して請求書を提示し、客の(一応の)同意の下で料金を支払うシステムになっています。
そのため、財物交付に向けた「だます行為」(欺罔(ぎもう)行為)が認められず、ぼったくりを詐欺罪で摘発することは難しいのです。 -
(3)暴行・強迫があった場合は刑法上の犯罪になり得る
ぼったくりに当たって、店側が客に対して「暴行」や「脅迫」を用いて料金の支払いを要求した場合には、恐喝罪(刑法第249条第1項)が成立する可能性があります。
また、暴行によって客をケガさせた場合には、傷害罪(刑法第204条)などが成立する余地もあります。
これらの刑法上の犯罪に該当する行為を受けた場合には、録音・撮影などによって、そのことを後から証明できるようにしておくことが大切です。
3、ぼったくりに気がついた場合にとるべき行動
飲食店内でぼったくりを受けていることに気がついた場合には、法外な料金の支払いを回避するために、以下のように適切な行動をとる必要があります。
-
(1)注文前ならばすぐに退店する
まだ飲食物を注文していない段階でぼったくりに気づいた場合には、すぐに退店を申し出ましょう。
早い段階で退店すれば、請求額を最小限に抑えることができます。 -
(2)不当な料金の請求は拒否する
請求の段階で、事前に同意していない追加料金を上乗せされていたり、知らないうちに注文が追加されていたりした場合には、「客側が同意のうえで注文したもの」の料金に限って支払う旨を申し出ましょう。
法的には、店側と客側がサービスの提供内容と料金に同意していなければ、客側はサービス料金を支払う義務を負いません。
そのため、店側から事前説明がなかった料金については、客側に支払いを拒否する権利があります。 -
(3)支払わざるを得ない場合はクレジットカードを利用する
ぼったくり飲食店から脅迫まがいの料金請求を受け、身を守るためにやむを得ず料金を支払う場合には、「可能であればクレジットカードを利用」しましょう。
後に警察に被害届を提出したうえで、クレジットカード会社に対してぼったくりの事情を説明すれば、引き落としを止めてくれたり、引き落とし済みの料金を返金(チャージバック)してくれたりする可能性があります。 -
(4)店内での様子・やり取りを撮影・録音する
ぼったくり飲食店を告訴したり、料金の返還を請求したりする場合には、「ぼったくりの事実に関する証拠を確保する」ことが大切です。
スマートフォンのボイスメモやカメラなどを適宜活用して、店員とのやり取りの内容や、店内の様子などを記録しておくとよいでしょう。
4、ぼったくり被害の相談先は?
ぼったくり被害の相談先としては、警察・国民生活センター・弁護士などが挙げられます。
-
(1)警察が対処してくれる場合もある
ぼったくり被害に関して、警察は「民事不介入」の原則により、対応してくれないということがよく言われています。
これは前述のとおり、ぼったくりを刑事事件として立件するのが難しいという事情によります。
しかし、ぼったくりに伴い、恐喝罪や暴行罪・傷害罪などに当たる行為がなされたという有力な証拠がある場合には、警察も動いてくれる可能性が高いです。
警察の協力を得るためには、やはり現場でのやり取りを録音などによって記録しておくことが重要になります。
また、店員から暴行を受けてけがをした場合には、その経緯を警察で詳しく説明すれば、警察が捜査を開始してくれる可能性が高まるでしょう。 -
(2)国民生活センターに相談する
独立行政法人国民生活センターでは、ぼったくりなどの消費者被害に関する相談を受け付けるため、「消費者ホットライン」を開設しています。
(参考:「消費者ホットライン」(国民生活センター))
消費者ホットラインにぼったくり被害の相談をすると、今後の対処法についてアドバイスをしてくれるでしょう。 -
(3)弁護士に相談して解決する
ぼったくり飲食店の刑事告訴や返金請求など、具体的な法的手続きを視野に入れて行動したい場合には、弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士は依頼者の代理人として、捜査機関とのやり取りや、ぼったくり飲食店との間の交渉・手続きを代行・サポートしてくれます。
依頼者としても、弁護士に依頼することで、ぼったくり被害に関する精神的な負担が大きく緩和されることでしょう。
5、まとめ
ぼったくり飲食店に入店してしまった場合、疑いを持った時点で速やかに退店すること、また不当な料金は一切支払わないという毅然(きぜん)とした態度で対応することが重要です。
万が一ぼったくりのトラブルに遭ってしまった場合には、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、ぼったくり被害に遭った依頼者を精神的にサポートしつつ、悪質なぼったくり飲食店に対して効果的な責任追及ができるように尽力いたします。
ぼったくりの被害に遭ってしまいお悩みの方は、ぜひベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています