扶養義務者とは? 親兄弟・事実婚など対象範囲をわかりやすく解説

2021年02月22日
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扶養義務者とは? 親兄弟・事実婚など対象範囲をわかりやすく解説

令和2年11月1日現在、千葉市の推計人口は98万1646人で、世帯数は44万7577世帯です。
1世帯当たりの構成員数は約2.193人で、核家族化が進んでいることがうかがえます。

家族・親族のうち、失業などで経済的に困窮している人がいる場合、扶養義務をおわなければならないケースがあります。

扶養義務者の範囲は、基本的には被扶養者との関係性によって決まりますので、ご自身が扶養義務者に含まれているかどうかを確認しておきましょう。

本記事では、扶養義務者とは何かについて、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「推計人口」(千葉市))

1、扶養義務とは?

民法第877条第1項では、直系血族および兄弟姉妹は、お互いに扶養をする義務がある旨が定められています。さらに、民法第752条に定められる夫婦の相互協力扶助義務の一環として、扶養義務があると解されています。

まずは、これらの扶養義務とは何を意味するのかについて、基本的な事項を理解しておきましょう。

  1. (1)自力では生活が成り立たない親族を経済的に援助する義務

    扶養義務とは、自分の稼ぎだけでは生活を成立させることができない親族がいる場合に、仕送りや現物支給などにより、経済的な援助を行う義務を意味します。

    扶養義務者は、被扶養者から扶養を請求された場合には、協議または家庭裁判所の判断により、一定の経済的援助を行わなければなりません(民法第879条)。

    なお、扶養に関する権利義務は、純粋に親族関係に起因して発生するものなので、扶養を受ける権利を第三者に譲渡することはできません(民法第881条)。

  2. (2)扶養義務は生活保護に優先する

    民法上、扶養義務が認められているのは、いわゆる家族・親族の「絆」を強調するというだけでなく、親族同士の扶養を促すことによって、社会保障費を削減することも目的としています。このことは、生活保護の受給要件に表れています。

    つまり、生活保護の受給を申請する際には、その前の段階で、まず扶養義務者からの扶養を受ける必要があるのです。
    そのため、ある人が生活保護の受給を申請した場合は、自治体から扶養義務者に対して、扶養義務の履行状況に関する照会状が届くことがあります。

    扶養義務者が照会に対して回答した内容を踏まえて審査が行われた結果、扶養義務が果たされていないと判断された場合、扶養義務者は自治体から、生活保護費の一部を徴収される可能性があるので注意が必要です。

  3. (3)生活保持義務と生活扶助義務の二つに分かれる

    「扶養義務」としてひとまとめに語られることが多いですが、実際には「生活保持義務」と「生活扶助義務」の二つがあると解されています。

    「生活保持義務」とは、扶養義務者自身と同じ水準の生活を、被扶養者にも保障する義務をいいます。
    生活保持義務を負うのは、被扶養者の配偶者と、未成年の子どもである被扶養者の両親です。

    これに対して「生活扶助義務」とは、扶養義務者自身の生活は通常どおり送れることを前提として、その余力の範囲内で、被扶養者を扶養する義務をいいます。
    未成年の子どもに対する両親以外のケース、たとえば兄弟姉妹や、成人済みの子どもに対する両親が負う扶養義務は、この生活扶助義務ということになります。

    生活保持義務は、生活扶助義務と比べるとはるかに重い義務ですので、ご自身が負っている扶養義務がどちらに該当するかを確認しておきましょう。

2、扶養義務者の範囲・順位は?

扶養義務者の範囲・順位は、民法に定められている以下のルールによって決定されます。

  1. (1)直系血族および兄弟姉妹

    扶養義務者には、原則として直系血族と兄弟姉妹が含まれます(民法第877条第1項)。
    このうち直系血族には、父母・祖父母・曾祖父母(そうそふぼ)・子ども・孫・ひ孫などが該当します。

    被扶養者との関係性によって、負担する扶養義務の性質が「生活保持義務」、「生活扶助義務」に分かれることは前述のとおりです。

    なお、兄弟姉妹が結婚して戸籍から外れた場合であっても、被扶養者との間で法律上の兄弟姉妹関係は残ります。
    そのため、結婚の事実が扶養義務の存否などに影響を与えることはありません。

  2. (2)配偶者

    夫婦間には、民法第752条に基づく相互協力扶助義務が定められています。
    その一環として扶養義務があると解されているので、被扶養者の配偶者にも、扶養義務が認められます。

    なお、配偶者が負担する扶養義務の性質は「生活保持義務」です。

  3. (3)特別の事情がある場合は3親等内の親族も

    直系血族および兄弟姉妹がそろって経済的に困窮しているなど、上記のルールに従った場合に、被扶養者が誰からも扶養を受けられないケースがあり得ます。

    このような特別の事情がある場合には、家庭裁判所の審判により、被扶養者と3親等内の親族に対しても、扶養の義務が課されることがあります(民法第877条第2項)。
    家庭裁判所の審判により特別に扶養義務を課される可能性があるのは、伯父(叔父)、伯母(伯母)、おい、めいなどです。

    こうして家庭裁判所によって特別に課された扶養義務の性質は、「生活扶助義務」にとどまります。

  4. (4)扶養の順位は?

    扶養義務者が複数人いる場合には、扶養の順位は、扶養義務者間での協議によって定めるのが原則です。
    ただし、協議が調わない場合や、そもそも協議をすることができない場合には、家庭裁判所によって扶養の順位が定められます(民法第878条)。

3、医療福祉行政上の「扶養義務者」は生計の同一性が必要

前述のとおり、法律上の扶養義務者は、基本的には専ら被扶養者との関係性によって決まります。
これに対して、医療・福祉に関する行政上の取り扱いにおいて扶養義務が問題となる場合には、法律上の扶養義務者の要件に加えて「生計を同一にしていること」が必要となります。

医療福祉行政上の「扶養義務者」の定義(生計同一要件あり)が問題となり得るのは、以下のような場合です。

  • 児童手当など各種手当の支給要件の判断において、扶養義務者を含めた家族の総年収を計算する場合
  • 社会保険の被扶養者要件を判断する場合
    など


生計を同一にしているかどうかの判断は、ケース・バイ・ケースとなります。
一例として、健康保険に関する生計維持が認められる基準は、以下のように定められています。

  • 被扶養者と扶養義務者が同一世帯の場合、被扶養者の年間収入額が130万円未満で、かつ扶養義務者の年収の2分の1未満
  • 被扶養者と扶養義務者が同一世帯でない場合、被扶養者の年間収入額が130万円未満で、かつ扶養義務者からの仕送り額より少ない場合
  • 被扶養者が60歳以上、または障害者の場合は、上記の「130万円未満」を「180万円未満」に変更

4、扶養義務に関して弁護士に相談した方がいい場合

扶養義務は親族同士の問題として、話し合いで解決される場合も多いです。
しかし、以下のような場合については、対応方法を検討するために、一度弁護士に相談することをおすすめいたします。

  1. (1)自治体から扶養義務の履行に関する照会状が届いた場合

    ご自身が扶養義務を負う親族が生活保護の受給を申請した場合、自治体から扶養義務の履行状況に関する照会状が届きます。
    照会状に対する回答内容によっては、生活保護費の一部につき分担を求められる可能性があるので注意が必要です。

    もちろん虚偽申告はご法度ですが、実態以上に資力があるのではないかと自治体に誤解されることを防ぐためにも、返信の方針について一度弁護士に相談してみると良いでしょう。

  2. (2)扶養を理由に遺産分割における寄与分を主張したい場合

    扶養に関して重大な法律問題が生じ得る場面のひとつが、遺産分割です。

    遺産分割では、生前に被相続人の扶養を行った相続人に対しては「寄与分」が与えられ、相続分を多く受け取れる可能性があります。
    しかし、寄与分の主張は抽象的かつ法律上の難しい問題が潜んでおり、ご自身だけで適切に主張・立証の準備をすることは困難です。

    もし他の相続人と比べても、被相続人の生前に多額の援助をしたという自覚がある場合には、速やかに弁護士にご相談ください。
    依頼者のお話を丁寧に伺い、寄与分に関連する事情を洗い出すことで、交渉・調停などを有利に進める可能性があります。

5、まとめ

配偶者・直系親族・兄弟姉妹など、被扶養者に対する扶養義務を負う者は、被扶養者に対して金銭的な援助を行わなければなりません。

また、扶養義務の履行は生活保護受給の前提となっているため、ご自身が扶養義務を負う親族が生活保護を申請した場合、自治体から扶養義務の履行状況に関して照会が行われることがあります。

一方、親族に対する扶養義務を履行した場合には、相続に関する遺産分割協議において寄与分を主張できる可能性もあります。

いずれにしても、扶養義務の履行が問題となった場合には、十分な法的検討と慎重な対応が必要不可欠です。

ベリーベスト法律事務所は、親族法や相続法に精通した弁護士が、ご家庭における法的問題を解決へと向かわせる手助けを差し上げます。
扶養義務に関してお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています