配偶者からの無視を理由に離婚できる? 無視以外に離婚できるケース

2022年12月22日
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配偶者からの無視を理由に離婚できる? 無視以外に離婚できるケース

千葉市が公表している統計資料によると、令和元年の千葉市内の離婚件数は、1630件でした。離婚の種類別でみると、協議離婚が1407件、調停離婚が178件、審判離婚が5件、判決離婚が16件、和解離婚が24件となっており、圧倒的に協議離婚の件数が多いことがわかります。

離婚の原因は男女ともに「性格の不一致」が多い傾向にありますが、性格が合わないことで「無視」につながってしまうケースもあるでしょう。配偶者からの無視が続くのはつらいことです。その結果、離婚を考えることもあるでしょう。

しかし、配偶者から無視されているという理由だけで離婚をすることができるのでしょうか。また、無視されているという理由で慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

今回は、配偶者からの無視を理由とする離婚について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。

1、配偶者からの無視を理由に離婚することは可能か?

配偶者から無視されたことを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。離婚が認められる要件をみていきましょう。

  1. (1)合意があれば離婚できる

    離婚をする場合、まずは夫婦の話し合いによって離婚を進めていくのが一般的です。このように話し合いと合意による離婚を「協議離婚」といいます。

    協議離婚の場合は、互いに合意さえしていれば、どのような離婚理由であっても問題ありません。したがって、配偶者から無視をされたという理由で離婚をすることも可能です。

  2. (2)裁判上の離婚は難しい

    離婚の話し合いをしようとしても、相手が話し合いに応じてくれない場合は、「調停離婚」や「裁判離婚」を目指すことになります。

    裁判離婚をする場合には、民法770条1項によって定められている以下のような法定離婚事由に該当する事情がなければ、離婚を認めてもらうことができません。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある


    配偶者による無視によって離婚をする場合には、配偶者による無視が法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する必要があります。その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、婚姻関係が破綻しており、修復の見込みがない状態であることをいいます。
    そのため、夫婦げんかをして一時的に無視されているという状態にすぎない場合には、離婚が認められる可能性は低いでしょう。

    他方、無視が長期間続いていたり、無視がモラハラに該当したりするような場合は、婚姻関係の修復が困難であると評価され、離婚が認められる可能性があります

2、配偶者からの無視に対して慰謝料の請求は可能か?

配偶者からの無視を理由に離婚をする場合には、離婚にあたって慰謝料を請求することができるのでしょうか。

  1. (1)一時的な無視だけでは難しい

    慰謝料を請求するためには、相手が離婚に至る主な原因を作り出したといえることが必要になります。

    配偶者から無視されたとしても、それが夫婦げんかによって2~3日無視されるといった程度であれば、有責配偶者であるとまではいえませんので、配偶者による無視を理由に慰謝料請求をすることは難しいといえます。

  2. (2)継続的な無視の場合であればモラハラとして請求できる可能性がある

    配偶者による無視が一時的なものではなく、継続的であった場合には、配偶者によるモラハラだと評価できる可能性があります。

    ただし、離婚慰謝料を請求するためには、請求する側において、相手が有責配偶者である証拠をもとに立証していかなければなりません。つまり、無視を理由に慰謝料請求をする場合には、相手から無視されていたということを証明する証拠が必要になります

    しかし、「あること」を証明するのに比べて「ないこと」を証明するのはハードルが高く、無視を理由に慰謝料請求をするのは難しいケースが多いです。

3、法定離婚事由に該当すれば裁判で離婚が認められる可能性も

配偶者に無視されたことだけでは、離婚をすることは難しいですが、以下のような法定離婚事由に該当する場合には、裁判で離婚が認められる可能性があります。

  1. (1)生活費を渡してもらえない

    夫婦間には、法律上、同居・協力・扶助の義務があります。配偶者が健康で働いているにもかかわらず、家庭に生活費を振り込んでくれないという場合には、夫婦の基本的な義務である協力・扶助義務に違反することになります。

    したがって、生活費を渡さないことについて正当な理由がなければ、法定離婚事由である悪意の遺棄に該当し、離婚が認められる可能性があります。

  2. (2)モラハラやDVがある

    モラハラとは、「モラルハラスメント」の略であり、相手に対して精神的に追い詰める行為全般を指します。たとえば、無視する、大声で怒鳴る、行動を細かくチェックする、相手の軽蔑や批判を繰り返す行為がモラハラの代表例です

    また、DVとは「ドメスティックバイオレンス」の略であり、夫婦間で行われる暴力のことをいいます。

    このようなモラハラやDVがあった場合には、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。

  3. (3)セックスレスの状態が続いている

    夫婦のどちらか一方が性交渉を拒絶している場合や子どもが欲しいのに性交渉を拒絶しているような場合には、正当な理由のないセックスレスになりますので、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。

    セックスレスで離婚が認められるには、1年以上など、一定の期間が必要です。そのため、数回断られた程度では離婚が認められるのは難しいでしょう。

    また、性交渉をしないことについてお互いが同意している場合や病気で性交渉ができないという場合には、セックスレスの状態になったことについて正当な理由がありますので、離婚は認められません。

  4. (4)不貞行為の事実がある

    配偶者以外の異性との間で肉体関係を持った場合には、法定離婚事由である不貞行為に該当しますので、離婚が認められる可能性があります。

    配偶者による不貞行為があった場合には、離婚をするかどうかにかかわらず、配偶者および不倫相手に対して、不倫慰謝料を請求することができます。

  5. (5)3年以上生死不明の状態が続いている

    配偶者の生死が3年以上不明である場合には、法定離婚事由に該当しますので、離婚が認められる可能性があります。生死不明とは生きているのか死んでいるのか不明である状態のことをいい、配偶者と連絡が取れず、どこにいるのかわからないというだけでは生死不明とはいえません。

  6. (6)長期的に別居をしている

    離婚をする前提として別居をして、その期間がある程度長期に及んでいるような場合には、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。

    離婚が認められる別居期間としては、事案にもよりますが、3年から5年がひとつの目安となります。長期間の別居のみを理由に離婚をする場合には、必要となる別居期間は長くなりますが、そのほかにも離婚事由があるという場合には、比較的短い別居期間であっても離婚が認められることがあります。

4、配偶者の無視を理由に離婚するためにできること

配偶者の無視を理由に離婚をする場合には、以下のような対応をおすすめします。

  1. (1)話し合いでの離婚を目指す

    配偶者から無視されたということだけでは、法定離婚事由に該当せず、裁判での離婚が認められない可能性があります。

    配偶者による無視がモラハラに該当するような場合には、離婚が認められる可能性もありますが、裁判所がどのように評価をするのかケース・バイ・ケースですので、裁判での離婚よりもまずは当事者同士の話し合いによる離婚を目指しましょう。

  2. (2)当事者同士での話し合いが難しければ弁護士に依頼

    当事者同士の話し合いによって離婚を進めていくことが難しいという場合には、弁護士に依頼をするとよいでしょう。相手から無視されている状況では、当事者同士での話し合いが難しい場合もありますので、弁護士を介して話し合いをした方がスムーズに離婚の話し合いが進む可能性が高まります。

5、まとめ

配偶者から無視されていると夫婦でいることに意味を見だすことができず、離婚を検討する方も少なくありません。しかし、単に無視されているというだけでは、法定離婚事由に該当しない可能性もありますので、まずはできる限り話し合いでの離婚の成立を目指していく必要があるでしょう

ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスでは、離婚の話し合いの段階からサポートし、必要に応じて離婚に必要な証拠集めのアドバイスや離婚裁判の手続きまで行います。相手から無視されて離婚を検討している、離婚の話し合いが進まないという場合には、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています