養育費が未払いになった時の相談先と対処法│法的手続きは弁護士へ
- 養育費
- 養育費
- 未払い
- 相談
千葉市が公表している統計資料によると、令和2年の千葉市内の離婚件数は、1438件でした。そのうち子どもがいる夫婦の離婚は775件でしたので、全体の半数以上が子どもいる夫婦の離婚であったことがわかります。
子どもがいる夫婦が離婚する場合には、子どもの養育費について取り決めをすることになります。しかし取り決めをしたにもかかわらず、離婚後、養育費の支払いが滞ってしまうケースもあります。このような養育費の未払いが生じた場合には、どこに相談し、どのように対処したらよいのでしょうか。
今回は、養育費が未払いになった場合の相談先と対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費が未払いになってしまった場合の相談先と対処法
養育費が未払いになってしまった場合には、どのような対処法があるのでしょうか。
-
(1)養育費未払いの相談先
養育費の未払いで困った場合には、以下に相談してみましょう。
① 養育費等相談支援センター
養育費等相談支援センターは、厚生労働省から委託を受けた公益社団法人が運営する相談窓口です。
養育等相談支援センターでは、養育費や面会交流などに関する問題について、電話やメールでの相談を受け付けています。
法律相談ではありませんので、法的なアドバイスは期待できませんが、養育費の未払いが生じた場合の対応方法などを説明してもらうことができます。
まずは、「養育費等相談支援センター お住まいの都道府県名」でインターネット検索してみましょう。
② 弁護士
未払いの養育費を回収したいという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士に相談をすることによって、未払い養育費の回収に向けたアドバイスを受けることができ、代理人として相手との交渉や強制執行の手続きのサポートも受けることができます。
初回相談が無料としている弁護士事務所もあるため、未払い養育費の問題をひとりで解決するのが難しいと感じる方は、まずは、弁護士に相談するとよいでしょう。
-
(2)養育費未払いの対処法
養育費の未払いが生じた場合には、以下のような対処法が考えられます。
① 相手への連絡
養育費の未払いが生じた場合には、まずは、相手に連絡をして、養育費の支払いを催促します。忙しくて支払いを忘れていたという可能性もあるでしょう。しかし、そもそも支払うつもりがないという場合は、相手と連絡がつかないケースも少なくありません。
② 家庭裁判所の履行勧告・履行命令
養育費の支払いが家庭裁判所の調停または審判によって定められた場合には、家庭裁判所の履行勧告・履行命令の制度を利用することができます。
履行勧告とは、養育費の支払い義務者に対して、裁判所から取り決めを守るように説得したり、勧告したりする制度です。
また、履行命令とは、裁判所が相当の期間を定めて養育費の支払い義務者に履行を命じる制度です。履行命令は、履行勧告よりも厳しい制度であり、正当な理由なく履行命令に従わない場合には10万円以下の過料の支払いが命じられることがあります。
ただし、履行勧告・履行命令は、いずれも強制力はありませんので、養育費の支払い義務者が履行勧告・履行命令に応じなかったとしても、支払いを強制することはできません。
③ 強制執行
相手が任意に未払い養育費の支払いをしない場合には、裁判所に強制執行の申立てを行います。強制執行によって相手の財産(預貯金、給料など)を差し押さえることで、未払いの養育費を強制的に回収することができます。
2、どこまでさかのぼって請求できるのか
未払いの養育費は、どこまでさかのぼって請求することができるのでしょうか。
-
(1)養育費の取り決めがない場合には難しい
離婚時に養育費の取り決めをしていなかった場合には、過去の分までさかのぼって請求することは難しいと考えられています。
「過去の分の請求が認められると金額が高額になり義務者にとって酷」、「権利者は養育費の支払いがなくても生計を立ててこられた」、「いつから養育費の支払いをすべきかが曖昧」などの理由があるからです。
ただし、養育費の取り決めがないケースでは、養育費の請求をした時点以降の支払いは認められますので、早めに請求をすることが大切です。その際には、養育費の請求をしたという証拠を残すためにも、内容証明郵便を利用したり、養育費請求調停の申立てをしたりするなどの工夫が必要です。 -
(2)養育費の取り決めがあっても時効に注意
養育費の取り決めがある場合には、過去の未払い養育についても請求することができますが、養育費の消滅時効には注意が必要です。
養育費の消滅時効の期間は、養育費の取り決め方法によって、以下のように異なっています。- 当事者間の合意による取り決めの場合(離婚協議書、公正証書):支払期日から5年
- 調停、審判、判決による場合:支払期日から10年
長期間養育費の支払いが滞っている場合には、消滅時効によって養育費を請求する権利が消滅してしまうおそれがあります。このような場合には、時効の更新または完成猶予などの方法によって時効期間の進行をリセットまたはストップすることもできますので、早めに対応することが大切です。
3、未払い養育費の請求方法
未払いの養育費がある場合には、以下のような方法で請求をします。
-
(1)相手に連絡して支払いを求める
養育費の未払いがあった場合には、まずは相手に連絡をして、支払いの催促を行います。
連絡方法に、特に決まりはありませんが、長期間未払いになっているような場合には時効の問題も生じますので、請求したことを明確にするためにも内容証明郵便を利用して書面によって請求するようにしましょう。
内容証明郵便という特別な形式の郵便が届けば、相手に心理的なプレッシャーを与えることができますので、任意の支払いも期待できるでしょう。 -
(2)養育費請求調停の申立て
養育費の支払いについて公正証書を作成しておらず、調停・審判・判決による取り決めもない場合には、家庭裁判所に養育費請求調停の申立てをする必要があります。離婚協議書で養育費の取り決めがされていたとしても同様です。
養育費請求調停では、基本的には、養育費算定表に基づき、当事者双方の収入および子どもの人数に応じて養育費の金額が定められます。過去に養育費の取り決めをしている場合には、その金額をベースにその後の事情変更の有無を加味して金額が定められます。
調停で養育費の金額などについて合意が得られた場合には、調停が成立しますが、合意できない場合には、調停不成立となり自動的に審判に移行します。審判では、調停とは異なり、裁判官が一切の事情を考慮して相当と考える養育費の金額を決定します。 -
(3)強制執行の申立て
公正証書、調停・審判調書、判決によって養育費が定められたにもかかわらず、相手が任意に養育費の支払いを行わない場合には、強制執行の申立てをすることができます。
民事執行法の改正によって、財産開示手続きの罰則の強化や第三者からの情報取得手続きが新設されましたので、以前に比べると未払いの養育費の回収が容易になっています。相手から任意に支払ってもらえないからといって、養育費の回収を諦めるのではなく、強制執行の手続きを検討するようにしましょう。
4、養育費の請求は弁護士へ
養育費に関することでお悩みの方は、弁護士にご相談ください。
-
(1)適切な回収方法をアドバイスしてもらえる
未払いの養育費を回収する方法には、相手との任意の交渉のほかにも、裁判所の履行勧告・履行命令、養育費請求調停・審判、強制執行などさまざまな方法があります。
どのような方法を選択するのかは、相手の態度や経緯などによって異なりますので、まずは弁護士に相談をして適切な回収方法についてアドバイスを受けるとよいでしょう。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
養育費の請求をする際には、離婚した元配偶者と連絡を取る必要があります。しかし、離婚の経緯や当事者の関係性によっては、連絡すること自体苦痛に感じる方もいるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、相手との交渉を代理で行いますので、負担を大幅に軽減することができます。また、弁護士が交渉することによって、相手に対して心理的なプレッシャーを与えることができ、過去の未払い分も含めて回収できる可能性が高くなるでしょう。 -
(3)複雑な法的手続きもサポートしてもらえる
相手が任意に支払いに応じない場合には、調停・審判や強制執行の手続きへと進みます。このような法的手続きを個人で適切に進めていくことは難しいといえます。スムーズな手続きのためにも、離婚問題の解決実績がある弁護士のサポートがあると安心でしょう。
また、過去に諦めていた未払い養育費についても民事執行法の改正によって回収できる可能性がありますので、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
養育費は、子どもの成長を支える大切なお金です。養育費の未払いが生じた場合には、そのまま放置せず、しっかりと回収できるよう働きかけましょう。弁護士のサポートを受けることで未払い養育費の回収の可能性が高まります。まずは、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています