年金を滞納したらどうなる? 滞納するリスクと差し押さえまでの流れ
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2020年度の千葉市美浜区の国民年金保険料免除者は、法定免除と申請免除とを合わせて6369人でした。
経済的に困難な状況等、一定の条件であれば、申請をして国民年金が免除になる可能性があります。しかし何も対応をせずに国民年金保険料を滞納すると、最終的に財産が差し押さえられてしまいます。猶予・免除の制度や債務整理などを利用して、できる限り早期に国民年金保険料の滞納を解消しましょう。
今回は、国民年金保険料を滞納した場合における差し押えの流れや、国民年金保険料が払えない場合の対処法などをベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
出典:「千葉市統計書(令和3年度版)」(千葉市)
1、国民年金保険料を滞納したらどうなる?
国民年金の保険料は、法律によって支払いが義務付けられています。年金保険料を滞納した場合、以下のリスクを負うことになるので十分ご注意ください。
- 延滞金が発生する
- 年金の受給額が減る
- 財産を差し押さえられる
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(1)延滞金が発生する
国民年金保険料を滞納した場合、納付期限の翌日から納付日の前日までの期間に対応する延滞金が発生します(国民年金法第97条第1項)。
延滞金の割合は、以下のとおりです(2022年1月1日から12月31日までの期間)。- 納付期限の翌日から3か月を経過する日まで:年2.4%
- 3か月経過日の翌日以降:年8.7%
延滞金が発生すると、余分に保険料を納付しなければならないのでご注意ください。
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(2)年金の受給額が減る
国民年金保険料の未納期間があると、将来受け取れる老齢基礎年金額が減額されてしまいます。納付していない期間1年あたり、年額約2万円減額となります。
国民年金保険料をさかのぼって納付できるのは、納付期限から2年間です。うっかり滞納してしまった国民年金保険料は、早めに納付することをお勧めいたします。 -
(3)財産を差し押さえられる
国民年金保険料の未納者に対しては、厚生労働大臣は督促を行うことができます(国民年金法第96条第1項、第2項)。督促状で指定された期限までに国民年金保険料が納付されない場合、厚生労働大臣は滞納処分を行います(同条第4項)。
滞納処分が行われると、預貯金などの財産が強制的に没収され、国民年金保険料の支払いに充当されてしまいます。生活に大きな支障が出ることが予想されるため、督促状を受け取ったら速やかに国民年金保険料を納付しましょう。
2、国民年金保険料を滞納してから差し押えまでの流れ
国民年金保険料を滞納してから、滞納処分によって財産を差し押さえられるまでの流れは、おおむね以下のとおりです。
- 納付督励が行われる
- 督促状が送付される
- 差し押え予告が行われる
- 差し押えが実行される
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(1)納付督励が行われる
法律上の手続きではありませんが、まずは電話や郵便などによって国民年金保険料の納付を促す「納付督励」が行われるのが一般的です。
納付督励を受けた段階で国民年金保険料を納付すれば、特に大きな問題は生じません。財産の差し押えも回避できますので、納付督励にはできる限り応じましょう。 -
(2)督促状が送付される
日本年金機構から「督促状」が送られてきたら、差し押え1歩手前の段階です。
督促状では、滞納している国民年金保険料について、発送日から10日以上後の納付期限が指定されます(国民年金法第96条第3項)。期限までに国民年金保険料を完納しなければ、いつでも財産を差し押さえられる状態になってしまうので要注意です。
なお実務上は、督促状の前に「特別催告状」や「最終催告状」などの書面が送られてくることが多いです。特別催告状や最終催告状を受けた段階で、早急に対処することをお勧めいたします。 -
(3)差し押え予告が行われる
法律上は、督促状の納付期限が過ぎた場合、いつでも差し押えが行われる可能性があります。しかし実務上は、差し押えを行う前に、滞納者に対する差し押え予告が行われることが多いです。
差し押え予告を受けたら、そのまま放置すれば確実に財産が差し押さえられてしまいますので、速やかに日本年金機構へ相談してください。 -
(4)差し押えが実行される
差し押え予告の際に示された強制徴収の期日が到来すると、差し押えが実行されます。
差し押えの対象となることが多いのは、預貯金や給与債権などです。
預貯金の場合は差し押えの時点で残高がゼロとなり、滞納金に充当された後、残額が返金されます。
給与債権は手取り額の4分の1、または33万円を超える部分の額のいずれか多い方が差し押さえの対象となります。差し押さえられた給与額は、滞納金が完納されるまで、日本年金機構に直接支払われてしまいます。
3、国民年金保険料が払えない場合の対処法
国民年金保険料が払えない場合は、滞納処分による財産の没収を避けるため、早急に以下の対応をとってください。
- 保険料納付猶予制度を利用する
- 保険料免除制度を利用する
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(1)保険料納付猶予制度を利用する
20歳以上50歳未満で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月に申請する場合は前々年所得)が下記の金額以下の方は、日本年金機構への申請によって、国民年金保険料の納付が一定期間猶予されます。
<納付猶予の承認基準額>
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
納付を猶予された国民年金保険料は、10年以内に追納すれば、将来の年金の減額を回避できます。
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(2)保険料免除制度を利用する
本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月に申請する場合は前々年所得)が下記の金額以下の方は、日本年金機構への申請によって、国民年金保険料の全部または一部が免除されます。
<保険料免除の承認基準額>全額 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 4分の3 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 半額 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 4分の1 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
免除分に対応して将来受け取れる年金は、満額納付した場合の2分の1となります。
(例)
半額免除となった場合
→将来受け取れる年金は、全額納付の場合の4分の3
なお保険料免除の場合も、納付猶予の場合と同じく、10年以内であれば追納が可能です。
4、国民年金保険料だけでなく、借金の返済もある場合には?
借金の返済負担が重いせいで国民年金保険料を支払えない場合には、弁護士に相談して債務整理を行うことをおすすめします。債務整理には、主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の手続きがあります。
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(1)任意整理
任意整理は、債権者と直接協議を行い、利息・遅延損害金のカットや返済期日の変更を取り決める手続きです。
任意整理は裁判所を通さずに行うため、比較的簡単な手続きにより債務負担を軽減できるメリットがあります。対象とする債務は債務者自身が選べるため、保証人がいる債務や担保権付きの債務を外して任意整理を行うことも可能です。
その一方で、元本の減額は原則として認められないため、他の手続きに比べると債務の減額幅は小さくなりがちです。また、債権者の同意を得られなければ、任意整理によって債務を減額することはできません。
総じて任意整理は、債務額が比較的少なく、債権者の数もそれほど多くない方に向いている手続きといえます。 -
(2)個人再生
個人再生は、原則として債権者全員との間で、債務をカットした上で返済計画を組みなおす裁判手続きです。
個人再生手続きでは、債務総額に応じて、元本を含めた債務が最大10分の1に減額されます。また、再生計画に住宅資金特別条項を定めれば、自宅の土地・建物の処分を回避しながら債務を減額することが可能です。
ただし、個人再生を申し立てることができるのは、将来にわたって安定収入を見込める方に限られます。また、債務総額が100万円以下場合、個人再生による減額は認められません。
安定した収入があるものの、100万円を大幅に超える債務があり、任意整理では抜本的な解決が困難な場合には、個人再生を検討するのがよいでしょう。 -
(3)自己破産
自己破産は、財産を処分して債権者に配当する代わりに、残った債務を全額免除してもらう裁判手続きです。
自己破産は、債務の全額免除が認められるもっとも強力な債務整理手続きです。収入がない方・不安定な方であっても、支払不能の状態にあれば自己破産を申し立てることができます。
その反面、財産を処分されてしまうことが自己破産の最大のデメリットです。自己破産は、無収入の方・定職に就いていない方・債務が多額の方・多重債務状態の方などに向いている手続きといえるでしょう。
5、まとめ
国民年金保険料を滞納すると、将来の年金が減ってしまうことに加えて、滞納処分によって財産を差し押さえられてしまうおそれがあります。特に日本年金機構から催告状や督促状を受け取った場合には、納付猶予や保険料免除について、早急に年金事務所へ相談しましょう。
借金が原因で国民年金保険料を支払えない場合には、弁護士に相談して債務整理を行うことをおすすめします。ベリーベスト法律事務所は、お客さまのご状況を踏まえて最適な債務整理の方法をご提案し、実際の手続きも全面的にサポートいたします。
国民年金保険料の支払いや借金の返済が厳しく、状況を抜本的に改善したい方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスにご相談ください。
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