借金は名字が変われば踏み倒せる? 踏み倒すリスクと対処法

2024年03月12日
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借金は名字が変われば踏み倒せる? 踏み倒すリスクと対処法

千葉市では、令和4年(2022)年の一年間に3872組が結婚して、1290組が離婚しています。

借金を抱えている方のなかには「結婚や離婚などを行って名字が変われば、借金を踏み倒せるのではないか」と考えたことがある人もいるでしょう。しかし、実際には、名字を変えること借金を踏み倒すということはほぼ実現しません。むしろ、踏み倒そうとしたことが原因で遅延損害金が発生したり一括請求をされたりして、借金を返済することがさらに大変になる、というリスクのほうが大きいといえます。

そのため、借金に苦しんでいるとしても踏み倒そうとするのではなく、適切な方法で債務整理を行うことが大切です。本コラムでは、借金の踏み倒しが難しい理由と、借金を整理する有効な方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、名字を変えても改姓後の名字や旧姓は把握される

結婚や離婚などにより名字が変わったら、取引のある金融機関や貸金業者、クレジット業者に申告することが原則です。
しかし、申告をしなくても、業者は改正後の名字や旧姓を把握することができます。
以下では、どのようにして旧姓や改姓後の名字が調査されるのか解説します。

  1. (1)戸籍や住民票で調査される

    結婚や離婚、養子縁組など、名字が変わる身分行為をする際は、役所へ届け出をする必要があります。
    役所で届け出が受理されると、戸籍に届け出の内容が記載されて、改姓後の名字が記載された戸籍や住民票を取得することが可能になります。

    そして、債権者などの第三者であっても、正当な理由があれば戸籍や住民票を請求することが可能です。
    キャッシングやクレジットの取引があれば、住民票の請求が認められるため、容易に改姓後の名字や転居先の住所をつきとめられてしまいます

  2. (2)生年月日や運転免許証の記号番号などで確認できる

    ローンなどの申し込みをする際には、氏名や住所のほかに、生年月日、電話番号、勤務先などを申込書に記載し、本人確認のため、運転免許証や保険証などの写しをとられるのが一般的です。

    金融業者では、氏名や住所に生年月日など申込書に記載された個人情報をひもづけて管理しています。
    とくに生年月日や運転免許証の記号番号は基本的に変わることがないため、名字や住所が変わっても、同一人物であることは容易に確認されるでしょう。

  3. (3)信用情報機関で個人情報を参照される

    日本国内で営業する銀行や消費者金融、クレジット業者は信用情報機関に加盟しており、顧客の個人情報や契約内容、返済状況に関する情報を登録しています。

    信用情報機関とは、適正な審査を行い過剰な貸し付けを防止するための情報を管理する機関ですが、実際には債権回収の目的でも利用されています。
    信用情報機関に登録された情報は、国内のどの金融業者でも参照できるため、名字や住所が変わったことがひとつの会社に認識されると、すべての業者に把握されてしまうことになるのです。

2、借金を踏み倒そうとすることのリスク

名字を変えても借金を踏み倒すことは難しく、銀行や消費者金融にクレジット業者などが債権の回収を諦めることは、まず考えられません
以下では、返済が難しくなって借金を放置したり踏み倒したりすることのリスクについて解説します。

  1. (1)一括請求される

    ローンやクレジットの契約では決められた返済額を毎月返済することが一般的ですが、この返済を怠ると分割返済できなくなり、残債の一括請求を受けることになります。

    一般的なローンやクレジットの契約で一括請求されるのは、主に次のような理由です。

    • 一回でも返済を怠った場合
    • 契約内容に違反したり契約時に虚偽の申告をしたりした場合
    • 自己破産など債務整理を始めた場合


    実際には、いちど返済を怠っただけで一括請求されることはあまりありませんが、督促を無視していると、いずれ一括請求されることになってしまいます。

  2. (2)遅延損害金が発生する

    契約による返済期日を過ぎると、利息や手数料よりも高額な遅延損害金を請求されます。

    消費者金融やクレジット業者が請求できる遅延損害金の上限は、年率20%(分割手数料があるクレジット契約は年率14・6%)とされており、返済期日の翌日から返済するまで発生し続けます。

  3. (3)ブラックリストに登録される

    返済期限から一定期間経過しても返済しない場合、消費者金融などの業者は信用情報機関に「延滞」の事故情報を登録しますが、この状態を「ブラックリストに登録される」といいます。

    国内の業者は定期的に信用情報をチェックしているといわれており、一社でも返済を怠って事故情報が登録されると、すべての業者に把握されてしまいます。
    そのため、ひとつの会社からブラックリストに登録されると、別の業者でも融資が受けられなくなったり、クレジットカードの利用が停止されたりすることになるのです。

  4. (4)連帯保証人に迷惑をかける

    金融業者との契約で保証人を立てる場合は、「連帯保証人」とされるケースがほとんどです。
    連帯保証人は、本人が返済しない場合に、本人と同等の立場で返済の責任を負うことになります。

    連帯保証人になった方からすれば「まずは本人から取り立ててほしい」と思われるでしょうが、連帯保証人になった以上、債権者から請求されると返済しなければなりません。

  5. (5)財産を差し押さえられる

    督促を無視し続けていると、債権者は法的な回収手段に移行します。
    訴訟や支払督促など裁判所の手続きによる請求が行われて、最終的には給料や預貯金、不動産などの財産が差し押さえられてしまいます。

    ここまで手続きが進むと、今後に借金の問題を解決する方法も限定されてしまいます。

3、借金を返済できない時の対処法|債務整理について

借金の返済で苦しくなった場合は、早急に債務整理などの方法により解決することが大切です。

以下では、債務整理の方法について解説します。

  1. (1)任意整理

    任意整理とは、個別に債権者と交渉して将来発生する利息を免除するなどの譲歩をしてもらい、3年程度で分割返済する方法です。
    任意整理ができれば、それ以降は利息が発生せず、返済した分だけ借金が減っていくことになります。

    債務整理全般に共通するデメリットとして、ブラックリストに登録されることは避けられませんが、任意整理の場合は、それ以外のデメリットがほとんどありません。

  2. (2)個人再生

    個人再生は、住宅ローンなどを除く借金が5000万円以下であり、給料や事業による継続的な収入がある場合に利用できる手続きです。
    個人再生が認められると、住宅ローン以外の借金が最大で9割免除され、原則として3年以内に弁済していくことになります。

    個人再生は、マイホームを手放さずに住宅ローン以外の借金を整理したい場合や、借金の額が大きく任意整理が難しい方に向く手続きです。
    なお、債権者の多くが反対するとメリットが大きい小規模個人再生は利用できず、弁済額が高額になる給与所得者再生か自己破産を選択せざるを得なくなります。

  3. (3)自己破産

    自己破産は、高価な資産がある場合のみ資産を処分して債権者へ配当した上で、借金を全額免除してもらう手続きです。
    ギャンブルや浪費による借金がある場合は借金が免除されないのが原則ですが、正直に申告して生活を改める態度を示せば、ほとんどのケースで借金の免除が認められています。

    自己破産は、預貯金などの財産がほとんどない方に向いた手続きです。
    ただし、自己破産の手続き中に限り、警備員や宅地建物取引士など資格制限を受ける職種があることに注意してください。
    また、マイホームやローン中の自動車は手放すことになります。

  4. (4)消滅時効により借金を踏み倒すことはできる?

    消滅時効とは、借金などの債権について、請求や返済が一切されずに一定の期間が経過すると、債権を消滅させることができる制度です。
    現在の民法では、消滅時効の期間は5年(令和2年3月以前に商人ではない個人や住宅金融支援機構などから借り入れた場合は10年)とされています。

    しかし、「5年間返済をせずに夜逃げをしていれば、消滅時効が成立する」というわけではありません。
    債権者が裁判を起こして勝訴判決を得るなどすれば、時効期間はリセットされて新たな時効が進行するためです。
    住民票を動かさずに転居して所在が分からない場合でも、公示送達という方法により裁判を進行させることができるため、知らないうちに裁判を起こされて時効が更新されていたということもあり得ます。
    業者は消滅時効にかからないように債権を管理しているので、「意図的に時効を成立させることはほぼ不可能である」と認識しておいてください

4、借金問題の解決を弁護士に依頼するメリット

債務整理をする場合は、専門家である弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
以下では、弁護士に債務整理を依頼することのメリットを解説します。

  1. (1)借金の返済が苦しくなった時に知っておきたいこと

    借金の返済を続けていてもほとんどが利息の返済に回って残高が減らない場合や、借金の返済のために借金をしなければならないような状況であれば、できるだけ早く債務整理に着手したほうがよいでしょう。

    しかし、「債務整理をしようにもどうすればいいのか分からないし」という方や、「弁護士に依頼しようにもお金がない」と悩まれている方もいるはずです。
    弁護士であれば、債務整理の方法も弁護士が詳しく事情や希望をうかがって、適切なプランを提案することができます。
    弁護士に債務整理を依頼すると、借金の返済は基本的に停止します。
    弁護士費用の分割払いに対応している弁護士に依頼すれば、初期費用については、ひとまず心配はいらないので、まずは弁護士への相談を急ぎましょう。

  2. (2)弁護士に依頼すると取り立てがストップする

    弁護士に債務整理を依頼すると、弁護士が債権者へ受任通知を送付して、弁護士が交渉の窓口となります。

    受任通知を受け取った金融業者は、本人へ直接的に催促することが法律で禁止されます。
    そのため、債務者としては債権者からの取り立てに悩まされることなく、債務整理のための費用を用意したり生活再建に取り組んだりすることが可能になるのです。

  3. (3)適切な解決方法を提案してもらえる

    どの方法で債務整理を行うのかは、とくに重要なポイントです。
    たとえば、もっともデメリットが少ない任意整理を行おうとしても、債権者が受け入れられる条件を提示できなければ、逆に法的措置を早めてしまうおそれもあります。
    一方で、任意整理や個人再生も可能な状況で自己破産を選択してしまうと、本来なら避けられたはずのデメリットまで負うことになってしまいます。

    弁護士であれば、法律の専門知識や経験に基づいて、実現可能ななかでもっともデメリットが少ない方法の検討や提案を行うことができます。

  4. (4)債権者との交渉や裁判所の手続きを任せられる

    任意整理を行う場合、一般の方が自分で交渉しても、返済スケジュールの見直しが認められる程度であり、かえって利息の負担が大きくなるケースがほとんどです。

    弁護士には債権者との交渉を任せられるだけではなく、個人再生や自己破産など裁判所の手続きの代理人を依頼することができます。
    また、裁判官との面接についても、弁護士に同席を依頼することが可能です。
    なお、千葉地裁で個人再生をする場合には、弁護士に委任すると裁判所に納める費用が20万円安くなるというメリットもあります。

5、まとめ

名字を変えるなどして借金を踏み倒そうとするのは、現実的な方法とはいえません。
金融業者は氏名以外にも生年月日などと合わせて個人情報を管理しており、必要に応じて住民票を請求したり、信用情報機関の情報を参照したりして情報を収集しているためです。

借金の問題を解決するためには、債務整理がもっとも有効な方法となります。
債務整理の方法には複数の種類があるため、実現可能ななかでもっともデメリットが少ない方法を選択するため、まずは弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所では、債務整理に関するご相談を承っております。
借金の問題にお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています