仮想通貨の借金で自己破産できる? 破産以外の解決方法と合わせて解説
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スマートフォンでも手軽に投資ができる時代になり、株や仮想通貨(暗号資産)取引を始める方が増えています。
ただ仮想通貨のひとつであるビットコインは令和3年に史上最高値をマークした一方、数か月後には急落するなど価格は乱高下を繰り返しており、リスクの高い投資ともいえます。一獲千金を狙って大金を注ぎ込んだものの、暴落して大損をしたり、高い税金の支払いに窮していたりする方もいるでしょう。
仮想通貨は比較的新しい投資であり、それにより負った借金の取り扱いにはわかりにくい面もあるでしょう。この記事では、仮想通貨により負った借金の解決方法などについてベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
1、仮想通貨の取引で負った借金は自己破産できる?
仮想通貨投資では、購入資金や利益に課せられた税金の支払いのために借金をしてしまう方がいます。暴落などにより返済が難しくなった場合、自己破産はできるのでしょうか。
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(1)免責不許可事由に該当する可能性がある
結論から言うと、仮想通貨による借金でも自己破産できる可能性はあります。しかし、生活費のための借金などに比べて、ハードルは上がります。
その1番の理由は、仮想通貨投資が「免責不許可事由」に該当することです。
自己破産で借金をゼロにするためには、裁判所に申し立てを行い、「免責許可」を得る必要があります。
例えば、誰でもどんな事情でも自己破産をOKとしてしまえば、自己破産を前提に借金をするなど、制度を悪用するケースが多発するおそれがあります。
そこで法律では、以下のような行為を「免責不許可事由」とし、該当する場合には原則として免責はしないと規定しています(破産法第252条)。- 不当な破産財団価値減少行為
- 不当な債務負担行為
- 不当な偏波行為
- 浪費、賭博その他の射幸行為
- 詐術による信用取引
- 業務帳簿隠滅などの行為
- 虚偽の債権者名簿提出行為
- 調査協力義務違反行為
- 管財業務妨害行為
- 7年以内の免責取得など
- 破産法上の義務違反行為
仮想通貨や株などの投資は、ギャンブルなどと同じ「浪費または賭博その他の射幸行為」に当たるとされています。そのため原則として免責は認められません。
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(2)免責不許可事由があっても自己破産は可能
仮想通貨投資による借金は免責不許可事由に該当しますが、免責される可能性はゼロではありません。
免責不許可事由に該当したとしても、裁判所が認めれば免責が許可されることがあるのです。これを「裁量免責」といいます。
仮想通貨の借金で自己破産をする場合には、裁量免責を得ることがゴールとなるでしょう。 -
(3)裁量免責を得るために必要なこと
自己破産の手続きには「同時廃止」と「管財事件」の二種類があります。
同時廃止とは、破産手続き開始と同時に手続きが終了することです。債務者にめぼしい財産がないケースで適用され、早期に手続きが終わるというメリットがあります。
一方で管財事件は、裁判所が選任した破産管財人が財産などを調査し、換金や債権者への配当などを行います。同時廃止に比べて手続きに時間がかかり、費用も発生します。
免責不許可事由がある場合は同時廃止が利用できないため、管財事件となります。
仮想通貨投資による自己破産も管財事件となるため、管財人による調査が入ります。
その際、必要な資料を提出しなかったり、聞き取りに応じなかったりするなど、調査に誠実に対応しなかった場合、「反省が見られない」などとして裁判所に免責不許可と判断される可能性があります。
そのため裁量免責を得るためには調査に協力し、真摯(しんし)な反省と同じような借金はしないという意思を裁判所に示すことが必要です。
2、自己破産以外の仮想通貨の借金解決方法は?
自己破産ができない場合は、ほかの借金解決方法を検討しなければいけません。仮想通貨による借金で利用できる自己破産以外の債務整理はどのようなものがあるのでしょう。
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(1)自己破産以外の債務整理とは
自己破産以外の債務整理としては、主に以下の二つが適用できる可能性があります。
- 任意整理
- 個人再生
いずれも自己破産と違って借金をゼロにはできませんが、計画的な返済の道筋をつけられるため、借金問題解決につながる可能性があります。
自己破産では一部を除いてほとんどの財産を手放さなければならず、一定期間特定の仕事につけないなどのデメリットがありますが、任意整理や個人再生には適用されません。そのため人によってはこちらの方が適しているケースがあるかもしれません。 -
(2)任意整理で利息カット
任意整理とは、貸金業者などの「債権者」との話し合いを行って、借金の利息分をカットしてもらい、月々の返済額を減らす方法です。
自己破産と違って裁判所への申し立ては不要で、免責不許可事由のような利用条件もないため、貸金業者と合意できれば利用できます。
返済は続けなければならず、貸金業者との交渉というハードルはあります。しかし、仮想通貨で大きな借金を負った場合でも毎月の返済額が抑えられ、借金総額も減らせるため、有効な選択肢のひとつといえます。 -
(3)個人再生で借金減額
個人再生とは、裁判所に返済が難しいことを認めてもらい、借金を減額してもらったうえで、残債を原則3年で返済していく方法です。
借金を5分の1程度に減らせるほか、住宅ローンの残っている持ち家があったとしても売却せずにすむというメリットがあります。
利用者が限られており、裁判所への申し立てが必要なため手間がかかるほか、減額されても残った分は返済しなければいけませんが、借金の圧縮効果が見込めます。
3、仮想通貨の取引で発生した税金が払えない場合
仮想通貨取引で得られた利益は「雑所得」として扱われます。総合課税のため、取引で利益が得られても高額な税金が課せられ、支払いに窮してしまうケースもあり得るでしょう。では税金が支払えない場合はどうすればいいのでしょうか。
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(1)自己破産ができても税金の支払いは免除されない
自己破産をすればすべての支払いが不要になると思われがちですが、借金はゼロにできても「税金」の支払いは免除されません。
税金などの請求権は、法律で「非免責債権」と定められています(破産法第253条1)。つまり借金は免除されても支払い義務は残るのです。
非免責債権は、具体的には以下のようなものがあります。- 所得税、住民税、固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料など
- 不法行為に対する損害賠償金
- 養育費や婚姻費用
なお任意整理や個人再生も同様で、借金総額は減らせても税金は減らせません。
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(2)税金が払えない場合は行政に相談
「納税資金がなく、払えない」という場合には、まず税務署や市区町村の窓口に相談しましょう。すぐに払えない事情をきちんと説明すれば、分納や猶予に応じてもらえる可能性があります。
支払うお金がないからといって、決して放置してはいけません。
税金は滞納すれば延滞税が課され、支払うべき金額が膨らみます。役所から督促状が届いても無視していると、いずれ強制執行となり財産が差し押さえられる可能性もあります。
そうなる前に、まずは行政の窓口に相談しましょう。自己破産の手続き中であるなど、現在の状況を示す証拠があれば持参し状況を丁寧に説明してください。
4、仮想通貨の債務整理は弁護士に依頼すべき?
仮想通貨取引で負った借金の返済が難しい場合には、債務整理で解決を図りましょう。その場合は、まず弁護士に相談することが大事です。
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(1)自己破産が利用できるか判断してくれる
自己破産の利用を希望する場合は、まず裁量免責が得られそうか、よく検討しなければいけません。
裁量免責が認められる可能性がある場合には、管財人の調査への協力のほか、反省の意思を示すなどの対応が必要です。
借金問題の経験が豊富な弁護士に依頼すれば、自己破産の申し立て手続きのサポートはもちろん、裁判所へのアピール方法のアドバイスなどもしてもらえるため、裁量免責が得られる可能性は高まるでしょう。
自己破産で免責を得るのが難しい場合には、ほかの債務整理の方法を提案してくれます。
借金の金額やローンのある持ち家の有無などによって、任意整理と個人再生のどちらを利用すべきかは違ってきますが、弁護士は一人ひとりの事情にあった解決方法を提案してくれます。 -
(2)手続きにかかる負担を軽減できる
自己破産や個人再生をする場合には、書類の作成や裁判所への申し立てが必要です。任意整理の場合には貸金業者との交渉が必要です。
こういった手続きは手間がかかるうえに、心理的な負担も大きいでしょう。
弁護士に頼めばこれらを代行してくれます。豊富な法律知識をもとに適切に進めてくれるため、個人で行うよりもスムーズに進むと期待できます。
また貸金業者から取り立てを受けている場合にも、弁護士を代理人とすれば取り立てを停止させることができます。
5、まとめ
日本国内では仮想通貨取引所が増え、仮想通貨は身近になりつつあります。ただ仮想通貨を法定通貨として採用しようとする国がある一方、規制を進める国もあり、その度に価格は乱高下を繰り返しています。
仮想通貨取引で借金をしてしまった場合、生活費のための借金などと異なり、解決方法はやや複雑です。そのため弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士がお力になりますので、お困りの方はどうぞお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています