相続放棄の手続きはどう進める? 手順と注意点を弁護士が解説
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千葉市の人口動態統計によると、同市内における2019年中の死亡数は9340人で、出生数の6192人を大幅に上回っています。
相続財産の中に多額の負債があることが判明した場合、相続放棄の検討も選択肢のひとつです。
相続放棄は、家庭裁判所に対する申述によって行います。その際、法律上の留意点もいくつかありますので、円滑に相続放棄ができるように事前準備を整えましょう。
この記事では、相続放棄の手続きの流れや注意点について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「令和元年合計特殊出生率等(確定数)の統計データ」(千葉市))
1、相続放棄の「手続きを行う前」に確認すべきこと
一度相続放棄をしてしまうと、その意思表示を取り消すことは認められません。
そのため、実際に相続放棄を検討する前に、以下の事項について慎重に確認を行いましょう。
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(1)相続財産の調査を行い、資産と負債の金額を比較する
相続放棄は、相続財産中の負債が資産を上回っており、マイナスの財産を相続することになってしまう場合に有効な対処法です。
相続放棄をするかどうかの判断を正しく行うには、相続財産の調査を適切に行い、資産と負債の金額を比較する必要があります。
特に不動産や未公開株式など、客観的な価格が明らかでない資産については専門的な評価が必要となりますので、適宜弁護士などの専門家に相談して進めましょう。 -
(2)処分されたら困る相続財産がないかを確認する
マイホームの土地・建物などの相続したい財産があったとしても、相続放棄をしてしまうとそれはかないません。
そのため、単純に相続財産中の資産と負債の比較だけでなく、相続財産の中に、失うと困る大切な財産がないかについて、相続放棄の前に今一度確認しておきましょう。 -
(3)他の相続人に対して相続放棄をする旨を伝える
ご自身が相続放棄をした場合、他の法定相続人が相続する債務が増えてしまいます。
このことから、相続人のうち1人が相続放棄をすると、残りの相続人も一斉に相続放棄を強いられるケースも少なくありません。
他の相続人にとって不意打ちを生じさせないためにも、相続放棄を検討している場合には、事前にその旨を他の相続人にも伝えておくのがよいでしょう。
2、相続放棄手続きの流れ
相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して、その旨を申述する必要があります(民法第938条)。
以下では、相続放棄がどのような手続きを経て完了するのかについて、具体的な流れを解説します。
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(1)被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述書を提出する
相続放棄の申述は、「被相続人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所に対して、相続放棄申述書を提出して行います。
(参考:「相続の放棄の申述書(20歳以上)」(裁判所))
(参考:「相続の放棄の申述書(20歳未満)」(裁判所))
遠方の場合には、弁護士に代理提出を依頼するとよいでしょう。 -
(2)相続放棄の申述時の費用・必要書類は?
相続放棄の申述時には、申述人1人につき800円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要となります。郵便切手の必要額については、家庭裁判所の窓口で確認することできます。
また、相続放棄の申述に必要となる書類は以下のとおりです。<相続放棄の必要書類>- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
- 申述人が相続人であることを示す書類(続柄によって異なります。詳細は以下のページを参照)
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(3)裁判所による意思確認が行われる
家庭裁判所に対して相続放棄の申述書を提出してから1週間程度が経過すると、家庭裁判所から意思確認のための照会書が送付されます。
照会書では、相続放棄の申述書に記載された事項に関する再度の質問や、相続放棄の意思に変わりがないことについての確認が記載されていますので、申述の内容と矛盾がないように回答を記載し、裁判所に対して返送しましょう。 -
(4)相続放棄申述受理通知書が送付される
照会書への回答が完了すると、しばらくしてから「相続放棄申述受理通知書」が家庭裁判所から送付されます。
これで相続放棄の手続きは完了です。
なお、債権者の求めなどにより、相続放棄の事実を裁判所に証明してもらう必要がある場合は、家庭裁判所で「相続放棄申述受理証明書」の発行を請求することができます。
3、相続放棄の手続きをする際の注意点
相続放棄をする場合、手続き前後の行動や期間制限の観点から注意すべき点があります。
また、相続放棄をした場合、生命保険金や遺族年金の受給権はどうなるのでしょうか。
これらの点について、相続放棄に関する注意事項をいくつか解説します。
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(1)法定単純承認事由に注意|相続放棄が認められないことも
相続放棄をする場合、手続き完了前後の行動が「法定単純承認事由」(民法第921条)に該当すると判断されないように注意が必要です。
法定単純承認事由に該当する行為があった場合、相続人が相続について単純承認をしたものとみなされ、それ以降相続放棄は認められなくなってしまいます。
法定単純承認事由に該当する行為は、以下のとおりです。① 相続財産の全部または一部の処分
→売却、担保設定、賃貸借などをいいます。ただし、保存行為と短期賃貸借(民法第602条)は除きます。
② 相続開始を知った時から3か月以内に限定承認または相続放棄をしなかったこと
→後述します。
③ 相続財産の全部または一部の隠匿・私的な費消・悪意による相続財産目録への不記載
→相続放棄の前後を問わず、いずれも法定単純承認事由に該当します。
相続放棄をする場合には、法定単純承認事由に該当することを回避できるように、手続き前後の行動について弁護士のアドバイスを受けましょう。
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(2)3か月の期間制限に注意|伸長が認められる場合もある
相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に行わなければなりません(民法第915条第1項本文)。
この期間を過ぎると、相続放棄が認められなくなってしまう可能性があるので、財産調査などには早めの着手をおすすめします。
ただし相続開始後、期間がたってから債務が判明したケースなどでは、例外的に期間制限の伸長が認められる可能性があります(同項但し書き)。
この場合、債務の存在を知ってからどの程度の期間で相続放棄の申述を行ったかが重視されますので、やはり速やかに弁護士へご相談ください。 -
(3)相続放棄をしても生命保険金・遺族年金の受給は可能
相続放棄をした場合でも、「生命保険金」や「遺族年金」は通常どおり受け取ることができます。
生命保険金や遺族年金の受給権は、受取人の方が固有の権利として取得するものです。
したがって、これらの権利は相続財産には含まれないので、相続放棄をしたとしても、変わらず給付を受けることができるのです。
生命保険金や遺族年金の受け取り方法が分からない場合には、保険会社や年金事務所に確認してみましょう。
4、相続放棄の手続きをスムーズに進めるには弁護士に相談を
相続放棄をする場合、「相続財産の調査を正しく行う」ことが最大のポイントになります。
特に、相続財産の規模が大きな場合や、不動産・未公開株式などの評価が難しい財産が含まれている場合には、専門家に相続財産の調査を依頼して万全を期すことをおすすめします。
また、相続開始後時間がたってから債務が判明し、3か月の期間制限を過ぎた場合についても、弁護士に手続きを依頼することをおすすめします。
家庭裁判所に期間の伸長を認めてもらうためには、相続放棄が遅れた経緯について、合理的な理由説明が必要になります。
弁護士に依頼をすれば、家庭裁判所への経緯の説明等についてもサポートしてもらえるため、期間の伸長を認めてもらえる可能性が高まります。
相続放棄については、他にも法定単純承認事由などについての法的論点がありますので、弁護士などの専門家に相談しながら手続きを進めるのが安心です。
5、まとめ
相続放棄を検討する場合、実際の手続きへと着手する前に、財産調査などの事前準備を正しく行うことが大切です。
実際の相続放棄の手続きは、家庭裁判所に対して申述書を提出することがメインになりますのが、相続放棄に関する法的論点は多岐にわたることから、弁護士に手続きを依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、相続放棄の前提となる財産調査から実際の相続放棄の手続きまで、依頼者のために相続放棄全般をサポートいたします。
もし3か月の期間制限を過ぎてしまった場合でも、弁護士が家庭裁判所に対する説明を尽くし、依頼者が相続によって不利益を被らないように尽力いたします。
遺産分割問題でお悩みの方、相続放棄をご検討中の相続人の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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