相続トラブルのよくある事例・解決方法・相談先などを弁護士が解説
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人口動態統計のデータによると、2019年の千葉市内における出生数は6192人(前年比197人減少)、死亡数は9340人(前年比563人増加)でした。
相続では、親族同士の感情的なもつれや準備不足などが原因で、深刻なトラブルが生じてしまうことも少なくありません。相続に関するトラブルのパターンや特性を正しく理解して、生前対策や専門家への相談などを通じて、円滑に相続を乗り切りましょう。
この記事では、相続トラブルの代表例・対策・解決方法・相談先などについて、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「令和元年合計特殊出生率等(確定数)の統計データ」(千葉市))
1、発生しがちな相続トラブルの代表例
相続トラブルの内容はご家庭によって多種多様ですが、よくあるトラブルにはいくつかのパターンがあります。
まずはよくある相続トラブルの内容を知っておき、生前対策などによって未然にトラブルを防ぎましょう。
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(1)不動産などの分割方法で揉めてしまう
被相続人や相続財産へのこだわりから、遺産分割の方法で揉めるケースは非常によくある相続トラブルといえます。
特に不動産のように、評価の基準が複数存在し、かつ単純に分割が難しい資産が相続財産に含まれている場合には、遺産分割について揉めてしまう可能性が高いでしょう。 -
(2)遺産の使い込みが発覚する
遺産分割未了の相続財産は全相続人の共有であるところ(民法第898条)、一部の相続人が勝手に遺産を使い込んでしまうトラブルもよく見られます。
遺産の使い込みが発覚した場合、遺産の返還請求などを巡り、親族間の決定的な対立が生まれる可能性が高いでしょう。 -
(3)特別受益・寄与分についてのトラブル
相続において法律上の揉めやすい論点の代表例が、「特別受益」と「寄与分」です。
- 特別受益(民法第903条)
生前贈与・死因贈与・遺贈によって優遇を受けた者の相続分を減らし、それ以外の相続人の相続分を増やすことで、相続人間の公平を図る制度 - 寄与分(民法第904条の2)
生前の被相続人に対して大きな貢献があった者の相続分を増やし、それ以外の相続人の相続分を減らすことで、相続人間の公平を図る制度
特別受益と寄与分については、そもそも特別受益や寄与分が認定されるかどうかが微妙なケースも多く、さらに相続人間の公平感の問題も関係して、遺産分割協議における大きな論点になりがちです。
- 特別受益(民法第903条)
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(4)被相続人の借金が判明する
相続の対象は、相続開始時点で「被相続人の財産に属した一切の権利義務」(民法第896条)とされているため、借金などの債務も当然相続の対象になります。
借金の金額が大きく、相続財産がマイナスとなっている場合には「相続放棄」(民法第939条)を検討しなければなりません。
しかし、借金の存在を知らずに相続財産を処分してしまったり(民法第921条、法定単純承認)、3か月の期間制限(民法第915条第1項)を過ぎてしまったりして、相続放棄ができなくなるというトラブルもよく見られます。 -
(5)認識していない相続人・受遺者が遺産分割協議に加わる
被相続人が死亡した段階で初めて隠し子が判明したり、親族以外の者に対する包括遺贈が行われたりした場合には、これまで親族とは全く関係がなかった第三者が遺産分割協議に加わることになります。
この場合、通常の遺産分割協議に比べて紛糾するが予想されるため、遺産分割協議が長期化する懸念があります。 -
(6)偏った内容の遺言書に対して不満が噴出する
「長男に全財産を譲る」などの偏った内容の遺言書は今でもよく見られますが、遺産を相続できない相続人からは、多くの不満が噴出する可能性が高いでしょう。
この場合、遺言の無効確認請求や「遺留分侵害額請求」(民法第1046条第1項)などを巡って、相続人間で激しい対立が生じることが予想されます。
2、相続トラブルを防ぐために被相続人ができる生前対策
相続トラブルを未然に防ぐには、被相続人自身によって、相続を見据えた生前対策を行うことが有効です。
相続に関する生前対策の主な方法としては、「遺言書の作成」「生前贈与」「家族信託」の三つが考えられます。
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(1)遺言書を作成する
法定相続分のいかんにかかわらず、遺言書によって配分が指定された遺産は、遺産分割の対象から除外されるため、遺産分割協議における争点を減らすことに繋がります。
したがって、相続人同士の紛争を防止するためには、可能であれば遺言書の中ですべての遺産の配分を指定しておくのがよいでしょう。
ただし、遺言書によって遺産の配分を指定する際には、法定相続人の「遺留分」(民法第1042条第1項)に配慮して、遺留分侵害額請求に関する紛争を未然に防ぐための工夫をすることをおすすめいたします。 -
(2)生前贈与を行う
生前贈与にも、遺言による贈与(遺贈)と同様に、財産を遺産分割の対象から除外することで、遺産分割における争点を減らす効果があります。
また、生前贈与は受贈者との合意によって行われるので、受贈者にとって不意打ちになりにくい点もメリットです。
生前贈与を行う場合、遺贈の場合と同じく、法定相続人の遺留分に配慮することが大切です。 -
(3)家族信託を活用する
「家族信託」は、新たな生前対策の手法として最近注目されています。
家族信託を活用すると、生前から死後に至るまでの財産管理の方法を、細かく柔軟に指定することができます。
特に、小さな子ども(孫など)に財産を残したい場合などには、家族信託の活用が有効になるでしょう。
それ以外にも、家族信託の活用方法は幅広く存在するので、詳しくは弁護士にご相談ください。
3、相続人が相続トラブルを解決する方法
相続人同士が遺産分割で揉めてしまった場合、その他の相続トラブルが発生した場合には、以下の適切な対応によって、早期にトラブルを収束させる必要があります。
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(1)他の相続人の意見に耳を傾ける
遺産分割の方法で揉めてしまった場合には、ご自身の言い分だけを押し通すことは困難なため、ある程度の「妥協」も視野に入れて対応しましょう。
他の相続人の希望や意見に耳を傾け、ご自身の希望と照らし合わせれば、適切な妥協点を見つけられる可能性が高まります。 -
(2)専門家に相談する
相続財産の規模が大きい場合や、法律的な論点が問題になっている場合には、専門家を間に入れて相続トラブルの解決を図ることをおすすめします。
相続人の間だけで話し合いを行うと、感情的な対立が生じてしまい、トラブル解決への糸口が見えないこともよくあります。
弁護士などの専門家に相談すると、第三者的・専門的な視点からのアドバイス・サポートを受けられるため、相続トラブルを早期に解決できる可能性が高まります。
4、相続トラブルは誰に相談すべきか?
相続に関する相談先としては、主に司法書士・税理士・弁護士などの士業が挙げられます。
しかし、実際に「相続トラブル」が発生した段階では、弁護士への相談が必須となるでしょう。
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(1)司法書士は紛争を取り扱えない
司法書士は、相続登記を含めてワンストップで相続手続きの処理を行うことができる点を強みとしています。
しかし、紛争解決は司法書士の業務範囲から外れるため、相続人同士で実際にもめ事が発生している場合には、司法書士にその解決を依頼することはできません。 -
(2)税理士は税務関係の相談のみ
税理士は税務の専門家であり、相続との関係では、主に所得税の準確定申告や相続税申告の業務を遂行します。
その一方で、税理士は法律関係の事務を取り扱う資格ではないため、遺産分割協議の調整などを依頼することはできません。 -
(3)弁護士だけが相続トラブルを解決できる
弁護士は、法律事務全般を取り扱うことが法律上認められています。
特に、相続に関する紛争を業務として取り扱うことができるのは弁護士のみであるため、相続トラブルの発生時には、弁護士に依頼することが必須です。
弁護士には、遺産分割協議の調整・法的論点の検討・各種相続手続きの代行などをすべて任せることができます。
また、いまだ具体的な紛争に至っていない場合でも、後に相続人同士でトラブルが発生する可能性に備えるという観点からも、事前に相談するのも安心かもしれません。
5、まとめ
相続トラブルは多種多様であり、一度発生すると深刻化しやすいため、生前対策によってできる限り未然に防ぐ工夫をすることが大切です。
万が一相続トラブルに発展してしまった場合には、弁護士に相談して早期解決を図りましょう。
ベリーベスト法律事務所では、相続案件を専門的に取り扱うチームが、ご家庭の事情や相続財産の内容などに応じて、相続トラブルの解決方法をオーダーメードでご提案いたします。
遺産相続トラブルに関してお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています