遺産相続の話し合いの時期はいつがいい? 期限がある相続手続きとは

2024年07月31日
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遺産相続の話し合いの時期はいつがいい? 期限がある相続手続きとは

令和4年の千葉県の統計によると、千葉市内だけで約1万名の方が亡くなったと報告されています。被相続人が亡くなるとさまざまな手続きが必要になりますが、中でも遺産相続は重要な手続きといえます。

一般的に遺産相続の話し合いは、四十九日の法要の前後に行われることが多いでしょう。もっとも、相続手続きの中には期限が決まっているものもあるため、注意が必要です。

そこで、今回は、遺産相続の話し合いの時期や期限がある相続手続きについて、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。

1、遺産相続の話し合いはいつすべき? 時期はある?

財産を残した故人(被相続人)や遺産に対して、葬儀の手配や各種手続きなど、さまざまなことをしなければなりません。その中でも遺産相続は相続人全員の話し合いが必要となるため注意が必要です。

ここでは、遺産相続の話し合いはいつまでにしなければならないのか、解説します。

  1. (1)話し合いの時期に制限はない

    遺産相続の話し合いの時期に法的な制限はありません。一般的に、四十九日の法要の前後で親族間での話し合いが行われるケースが多いようです。

    もっとも、遺産分割の話し合いについての期間の制限はありませんが、手続きの期間の制限があります。そのため、いつまでも話し合いを先延ばしにせず、早めに進めていきましょう。

  2. (2)期間制限のある手続き

    「遺産の相続放棄をしたい」「遺言の内容に納得できないので“遺留分侵害額請求”をしたい」などの場合には、手続きに期限があります

    遺産相続の主な手続きに定められた期間は以下の通りです。

    相続放棄
    相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産もすべての財産を受け取らず、相続の権利を放棄する手続きです。相続放棄するためには、相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。この手続きは、家庭裁判所で行う必要があるため、事前に書類の準備等が必要です。

    相続税の申告、納付
    相続税の申告・納付は、相続開始を知った日から10か月以内に行う必要があります。10か月たっても申告しなければ、ペナルティーとして無申告加算税が課されます。また、納付しなければ、滞納日数に応じて延滞税も発生します。さらに、相続税を隠していたなど悪質なケースでは、重加算税が発生する可能性もあります。そのため、財産の調査・相続税の計算・申告書の作成には、時間がかかることからも早めに手続きを進めなければなりません。

    遺留分侵害額請求
    遺言や生前贈与によって、特定の者だけが財産を得て、不平等な相続が行われることがあります。そのような不平等な相続を解決するために、法定相続人に最低限度の遺産を取得させる制度として「遺留分侵害額請求」があります。遺留分侵害額請求をすることで、自分が受け取るはずだった遺産を受け取った相続人に対して、金銭で請求することができます。
    ただし、遺留分侵害額請求は、相続が開始されたこと、遺留分侵害があったことを知った日から1年以内にしなければなりません。そもそも遺留分の侵害があったのかわからない、確認したい場合は、すぐにでも弁護士に相談することをおすすめします。

    相続登記
    建物や土地などの不動産を相続した場合には、所有者の名義変更が必要です。相続にともない行われる名義の変更を「相続登記」といいます。相続登記は、2024年4月から義務化されており、3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が発生します。

    準確定申告
    被相続人が死亡した年に事業所得があった場合、相続人が代わりに確定申告しなければなりません。この代わりに行う確定申告を「準確定申告」といいます。準確定申告は、被相続人が亡くなってから4か月以内にしなければなりません。申告期間が過ぎてしまうと、延滞税が発生する可能性があります。

2、遺産相続の話し合いはどのように進める?

「誰が相続人にあたるのか」「どの遺産を分ければいいのか」などの遺産相続の話し合いは、スムーズに進まないことも珍しくありません。そこで、円滑な話し合いのためにどのように進めるべきか、協議の流れを確認しておきましょう。

  1. (1)遺産分割の話し合い|遺産分割協議

    誰が、どの遺産を、どのくらいの割合で相続するか、という遺産分割の話し合いを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。ひとりでも欠けてしまうと遺産分割協議が無効になります。

  2. (2)ステップ1|遺言書の有無の確認

    被相続人が亡くなったら、遺言書の有無を確認しましょう。故人の書斎や金庫、病室などに遺言書が残されていないか、探してみましょう。また、公証人に作成してもらう公正証書遺言であれば、日本公証人連合会の遺言検索システムで探すこともできます

    遺言書が見つかった場合には、原則として遺言の内容に応じて遺産が分割されることになります。そのため、遺産分割協議は必要ありません。

    ただし、遺言書の内容に相続人全員が反対することに同意したなど、遺言書と異なる遺産分割協議が例外的に有効となるケースもあります

  3. (3)ステップ2|相続人の確認

    遺産分割協議を進めるためには、誰が相続人にあたるか確定する必要があります。前述の通り、遺産分割協議は、相続人がひとりでも欠けると無効なものになります。そのため、法律上、誰が相続人にあたるのか正確に把握する必要があります。

    相続人を調べるためには、戸籍謄本などの戸籍情報を調査することになります。調べるのが難しい場合や離婚・再婚・養子縁組などの可能性がある場合には、弁護士に相談するようにしましょう

  4. (4)ステップ3|相続財産の確定

    相続人を確認するのと同時に、相続財産の調査も必要です。相続財産は、不動産や動産、預貯金、株式、保険などさまざまなものが対象になります。さらにこれらのプラスの財産だけでなく、カードの借り入れ、住宅ローン、車のローン、借金などマイナスの財産も相続財産に含まれます。

    プラスの財産のみが相続財産だと思っていたら、高額な借金があったというケースもあるため、すべての財産の調査を的確に行う必要があります

  5. (5)ステップ4|遺産分割協議

    相続人が確定し、相続財産の調査が終われば、遺産分割協議を始めることになります。遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要です。

    もっとも、相続人全員で一か所に集まる必要はなく、合意がとれれば、電話やメール、SNSのメッセージツールなどを利用しても構いません。また、遺産分割の内容を文書(遺産分割協議書)で郵送して、署名・押印をもらうことで合意とすることもできます。ただし、事後承諾ではなく、あらかじめ遺産相続についての取り決めについての同意を得ておく必要があります。

    また、相続人の中に未成年者がいる場合には、その親権者が代わりに遺産分割協議に参加することが可能です。未成年者であることを理由に遺産分割協議から親権者と共に参加させないと協議自体が無効になる可能性があるため注意しましょう。

  6. (6)ステップ5|財産目録

    相続財産が確定した後に、財産目録を作成することをおすすめします。財産目録とは、相続財産のすべてを一覧で記した表のことをいいます。

    財産目録の中には、建物や土地などの不動産から、車や価値のある品などの動産、預貯金、株式、保険などプラスの財産を記載します。また、借金や借り入れ、ローンなどのマイナスの財産の記載もすると、どのくらいの財産があるのか、明確になるでしょう。

    この財産目録の作成は、法律上の決まりではありません。しかし、不平等な相続や勘違いによって借金などを相続しないようにするために作成されます。遺産分割協議や遺産分割協議書の作成などその後の手続きも視野に入れて作成をしておくことが得策です。

  7. (7)ステップ6|遺産分割協議書の作成

    遺産分割協議が終わった後には、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書とは、遺産分割協議において決まった内容をまとめた文書のことをいいます。誰が、どの財産を、どれだけ相続するのか記載し、全員の署名と押印をします。そうすることで、全員一致で話し合いをし、遺産分割をしたという証明になります。

    この遺産分割協議書を一度作成すると、原則全員の同意がなければ内容の変更ができません。したがって、しっかりと相続人同士で話し合ってから、正確な内容を記載して作成する必要があります。遺産分割協議書は、相続登記などさまざまな名義変更の証明書となります

    もっとも、相続人がひとりの場合や遺言書によって遺産分割する場合には、遺産分割協議書が不要な場合もあります。その場合には、自分だけが相続人であることの証明として戸籍謄本や遺言書によって名義変更の手続きを進めていくことになります。

3、遺産相続の話し合いを行う際の注意点

遺産相続の話し合いを行う際には、ただ集まって話し合いをすればいいのではなく、有効な遺産分割協議にするために注意しなければならない点があります。

  1. (1)相続人全員で行う必要がある

    繰り返しになりますが、遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりません。ひとりでも相続人が欠けてしまうと円満に話し合いが終わり、それぞれの相続配分が決まったとしても無効な話し合いになってしまいます。

    相続人が欠けないようにするためには、誰が相続人にあたるのか正確な調査が必要です。

    相続人の調査が不十分なために、後になってトラブルになるケースとして、離婚、再婚、養子縁組がされている場合が挙げられます。離婚や再婚をしていると自分や周りの親族が全く知らなかったとしても実は相続人にあたる人がいる可能性があります。

    そのため、相続人について不安がある場合には、弁護士に依頼をし、相続人の調査をしてもらうことでトラブルを未然に防げる可能性が高まります。

  2. (2)遺産分割協議書は必ず作成する

    遺産分割協議書の作成は、法律上、絶対しなければならない手続きではありません。しかし、後になって「いった、いわない」のトラブルを防止するためにも書面にしておくことが大切です。

    さらに、遺産分割協議書は、第三者への効力もあるため、「自分が今後のこの土地の所有者になる」ということの証明として使うこともできます。また、名義変更の手続きをする際にも提出を求められることもあるため、弁護士に依頼をするなどして正確な内容で作成しましょう。

  3. (3)相続人の中に認知症の人がいる場合は成年後見人の選任が必要

    相続人の中に認知症の人がいる場合には、成年後見人の選任が必要です。認知症の人は、民法上、「意思能力」がないと扱われることがあります。

    意思能力とは、遺産相続など法的な行為をするための前提となる能力のことをいいます。意思能力がない人の判断で遺産分割協議が行われると、無効または取り消される可能性があります。

    そこで、認知症の人の代わりに法律行為をするための成年後見人の選任が必要です。成年後見人がいれば、認知症の人の代わりに遺産分割協議に参加し、有効な話し合いを行うことができます。成年後見人には、弁護士や司法書士などの法律の専門家だけでなく、親族がなる場合もあります。成年後見人の選任が必要な場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。

4、遺産分割協議を弁護士に相談する5つのメリット

遺産分割協議は、相続人同士の話し合いで進めることが可能です。しかし、弁護士に依頼する5つのメリットがあります。

  1. (1)相続人を調べてもらえる

    弁護士に遺産分割協議を依頼すると、相続人の調査を行えます。自分や兄弟姉妹のみが相続人の場合には、相続人を調査するまでもないと思うかもしれません。

    しかし、実は自分たちの知らないところで隠し子がいた、というケースもたびたびあります。そのような自分たちでは調べきることができない相続人も弁護士であれば、戸籍情報をたどり、調べることができます。

    未然に相続人を調べることで遺産分割協議をやり直すことになったり、知らない人から「無効である」と突然裁判を起こされたりすることを防止できます。

  2. (2)財産の調査|財産目録の作成

    財産の調査も自分では難しいことがあります。土地や建物などの不動産や車などの動産は比較的把握しやすい相続財産です。しかし、債権や株式など把握の難しい財産もあります。

    さらには、預金口座を被相続人が家族に隠していたり、黙って借金や借り入れしていたりなどマイナスの財産の発見は、難しいことがあります。この場合、弁護士であれば、すべて調べ上げた上で財産目録を作成することができます

    財産目録を確認することでそもそも相続すべきなのか、ということを改めて弁護士に相談するきっかけにもなります。

  3. (3)遺産分割協議書の作成

    遺産分割協議を行ったなら遺産分割協議書の作成は必須です。

    もし実際の話し合いと異なる遺産分割協議書が作成された場合、優先されてしまうのは遺産分割協議書の内容です。そのため、話し合いの内容と協議書の内容が正確に一致している必要があります。

    この遺産分割協議書は、第三者にも効力を有するため、弁護士に依頼をして法的な効力を有する書面にしてもらうようにしましょう

  4. (4)トラブルを防止できる

    遺産相続は、話し合いの当初、円満に進んでいたとしても、途中から話し合いがうまくいかなくなることもあります。

    また、全く知らない他人が相続人であったり、知らない財産が出てきたりすれば、話し合いがこじれる可能性は高くなります。そのような場合でも、早期に弁護士に依頼することで、法律に基づいた不利益の少ない遺産分割を進められるケースがほとんどです

    さらに、親族などの身内だけでは進まなかった話し合いも、第三者である弁護士が間を取り持つことで冷静に話し合いを進められる可能性が高くなるでしょう。

  5. (5)トラブルが起こっても対応してもらえる

    遺産分割協議を進めるうちに、親族間での争いが起き、長期のトラブルに発展してしまうこともあります。そのような場合に対処できる法の専門家は弁護士だけです。弁護士に依頼することで、遺産分割調停や遺産分割の裁判になったとしても、弁護士が代理人として交渉を進めてくれます。

    また、弁護士が代理人となることで他の相続人と自分が直接やりとりする必要もなくなり、身体的、精神的にも負担を軽減できます。早い段階で弁護士に相談しておくことで相続トラブルの芽をつむことも期待できるでしょう。

5、まとめ

遺産相続の話し合いは、スムーズに進めば早期に解決しますが、揉めてしまうと話し合いが平行線のままになるおそれがあります。早めに弁護士に依頼することでトラブルを未然に防止し、もしトラブルが生じても最適な対応とアドバイスが期待できます。

ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスでは、遺産相続の解決実績がある弁護士がおひとりおひとりに合わせて最適なアドバイスを行います。遺産相続でお悩みの場合、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています