遺産分割調停の呼び出しを無視するリスク│出席できないときの対処法は?
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裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に千葉家庭裁判所に申立てのあった遺産分割調停の件数は、525件でした。この統計からは、多くの方が遺産分割に関する争いを抱えていることがわかります。
当事者同士の話し合いで遺産分割に関する問題が解決できない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することになります。相続人によって遺産分割調停が申し立てられると、他の相続人に対して、家庭裁判所から調停期日通知書が送られ、調停の呼び出しがなされます。
このとき、調停期日は、裁判所と申立人の都合で決められてしまいます。そのため中には出席できない日取りになることもあるでしょう。しかし、出席できないからといって呼び出しを無視してしまうと、遺産分割において不利になるリスクが生じます。
今回は、遺産分割調停の呼び出しを無視すると起きる3つのリスクと出席できないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
1、遺産分割調停とは? 調停のメリットと期待できること
遺産分割調停とは、どのような手続きなのでしょうか。また、遺産分割調停を申し立てることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
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(1)遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が、当事者の間に入り、中立公正な立場で遺産分割に関する争いの調整や解決案の提案をしてくれる裁判所の手続きです。
遺産分割に関する問題は、まずは、相続人同士の話し合いによって解決を図ることになります。これを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議では、相続人同士の利害が対立することもあり、話し合いで解決できない場合もあります。そのような場合に利用されるのが遺産分割調停です。 -
(2)遺産分割調停なら解決が期待できる理由
遺産分割調停を利用することで、以下のようなメリットが得られます。
① 公平な遺産分割が期待できる
遺産分割調停では、中立公正な調停委員が間に入って、遺産分割に関する争いを調整してくれます。
調停委員は、以下のいずれかの条件を持つ人物が男女各1名ずつ選任されます。- 弁護士資格を持っている
- 民事事件や家事事件について専門的知識や経験を持っている
- 人格識見の高い40~70歳未満
これらの条件を満たした調停委員が調整に入るため、相続人全員が納得できる公平な遺産分割の実現が期待できます。
② 中立的な解決案を提案してもらえる
調停委員は、弁護士や司法書士といった専門家や社会生活で豊富な知識経験を有する人の中から選任されます。当然、遺産分割に関しても豊富な知識と経験を有していますので、当事者だけでは思いつかないような解決案を提案してもらうことができます。
中立公平な第三者から適切な解決案が提案されれば、相続人同士も受け入れやすいでしょう。
③ 相続人の間でトラブルになっていても解決できる
相続人同士で遺産分割をめぐるトラブルが生じてしまうと、当事者だけでは解決することができません。遺産分割調停も話し合いによる解決方法ですが、調停委員や裁判官がトラブルの解決に向けて調整や提案を行ってくれますので、相続人同士のトラブルもスムーズに解決することができます。
④ 冷静に話し合いを進めることができる
遺産分割調停では、調停委員が相続人の間に入って話し合いを進めてくれます。当事者だけの話し合いでは、感情的になってしまい言い合いになることもありますが、第三者が間に入ることで、冷静に話し合いを進めることが可能です。
そのため、遺産分割調停を利用することでスムーズな遺産分割ができるというメリットがあります。
2、遺産分割調停の呼び出しを無視する3つのリスク
裁判所からの遺産分割調停の呼び出しを無視すると、以下のようなリスクが生じます。
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(1)自分に有利な主張ができない
法定相続人には、法定相続分が定められていますので、法定相続分で遺産分割を行うのが基本となります。
しかし、生前に被相続人から多額の生前贈与を受けていた相続人がいる場合には、特別受益の持ち戻しによって公平を図る必要がありますし、被相続人と同居して介護に従事していた相続人がいる場合には、寄与分を主張することもできます。
このように法定相続分を修正する事情がある場合には、それを調停の場において主張立証していかなければ、有利な事情として考慮してもらうことはできません。遺産分割調停の呼び出しを無視すると、自分に有利な主張を行う機会を逃してしまいます。 -
(2)調停委員からの心証が悪くなる
調停では、調停委員がトラブルの調整や解決案の提案をしてくれます。調停委員も一人の人間ですので、中立公正な立場で対応するといっても、どちらか一方に肩入れしてしまうこともあります。
遺産分割調停の呼び出しを無視して、調停期日を無断で欠席すると、調停委員の心証を悪くしてしまいます。不信感を抱かれると自分のために積極的に相手を説得してくれなくなることもありますので注意が必要です。 -
(3)遺産分割審判に発展する
遺産分割調停を成立させるためには、当事者全員の合意が必要になります。
遺産分割調停の呼び出しを無視して、調停を欠席している状態では、遺産分割調停を成立させることはできません。このような状態だと、遺産分割調停は、不成立となり、自動的に審判の手続きに移行します。
審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、適切な遺産分割方法を決定することになりますので、調停のような柔軟な解決はできなくなります。
3、遺産分割調停に出席できない・したくないときの対処法
遺産分割調停に出席できないまたは出席したくない場合には、以下のような対処法が考えられます。
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(1)欠席、日程変更の連絡をする
遺産分割調停の初回期日は、裁判所と申立人の都合だけで決められてしまいますので、相手方としては日程の都合が悪いということもあります。
そのような場合には、呼び出しを無視するのではなく、裁判所に事前に欠席の連絡をするか、日程変更のお願いをしてみるとよいでしょう。
欠席の連絡をすることで、調停委員に悪い印象を与えるのを回避できますし、日程変更をしてもらえれば、初回期日から自分の意見を伝えることができます。 -
(2)電話会議を利用する
遺産分割調停が行われる裁判所は、原則として相手方の住所地を管轄する裁判所になります。相手方が複数人いる場合には、遺産分割調停が行われる裁判所が自分の居住地から遠方の裁判所で、移動の負担が大きいということもあり得ます。
毎回遠方の裁判所に移動するのが大変だという場合には、電話会議システムの利用を検討してみましょう。
電話会議システムとは、自宅の最寄りの家庭裁判所から遺産分割調停が行われる裁判所に電話をつないで、調停に参加することができるシステムです。電話会議システムの利用には、裁判所の許可が必要になりますので、裁判所に確認をすることが必要です。 -
(3)弁護士に依頼する
家事や仕事の都合から調停に出席することが難しいという場合には、弁護士への依頼を検討してみましょう。
弁護士は、本人の代理人として、遺産分割調停に参加することができますので、本人が調停期日に出席できない場合でも弁護士が出席することによって、話し合いを進めることができ、遺産分割調停を成立させることもできます。
本人が調停期日に出席する場合でも弁護士が同行してくれますので、調停委員に対し、法的観点から有利な主張をすることが可能です。 -
(4)相続放棄をする
そもそも遺産を相続するつもりがないという方や争いに巻き込まれるなら相続財産はいらないという方は、相続放棄をすることによって、遺産分割調停の当事者から外れることができます。
ただし、相続放棄が受理されてしまうと、その後「やはり遺産を相続したい」と思っても撤回はできません。また、相続放棄には期日があり、相続開始を知ったときから3か月以内に裁判所に申述をしなければなりません。
4、遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット
遺産分割調停を弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットが得られます。
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(1)調停期日に同席してもらえる
多くの方が初めて遺産分割調停を経験することになりますので、調停委員に対して、どのような話をして、どのような対応をすればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。
遺産分割調停を弁護士に依頼すれば、遺産分割調停の期日に弁護士が同席するため、初めての遺産分割調停でも安心して対応することができます。
調停委員に話をする際にも、弁護士が法的観点に基づきサポートするため、自分の主張をしっかりと調停に反映させることができます。 -
(2)最適な解決方法をアドバイスしてもらえる
遺産分割調停では、相手方や調停委員から遺産分割の解決方法が提案されることがあります。
しかし、提案された解決方法が適切なものであるかは、遺産の評価方法、遺産の分割方法、特別受益、寄与分などさまざまな事情を考慮しなければ判断できません。
このような判断は、一般の方が個人でするのは難しいため、実績のある弁護士のアドバイスが不可欠です。弁護士であれば、提案された解決方法が適切なものであるか判断することができ、不適切な方法であれば再度解決方法を提案することも可能です。
5、まとめ
遺産分割調停の期日は、裁判所と申立人の都合で決められるため、初回の期日に出席できない場合もあります。その際は、呼び出しを無視するのではなく、欠席の連絡をするなど適切に対応する必要があります。
毎回調停期日に出席するのが負担だという方は、弁護士に依頼をすることでその負担を軽減することもできます。
調停期日の呼び出しが届いたという方は、調停を有利な方向に進めるためにも、まずはベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまでご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています