交通事故で相手が過失を認めない場合、どうするべきか
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千葉県警察が公表している交通人身事故の発生状況に関する資料によると、令和4年に千葉県内で発生した交通人身事故の件数は、1万3223件でした。
交通事故が発生すると、被害者および加害者の責任に応じて過失割合を定めることになります。しかし、過失割合が大きくなると被害者に支払う賠償金が高額になることから、自分の不注意によって生じた事故であるにもかかわらず、加害者が過失を認めないことがあります。
このように相手が過失を認めない場合には、どのように過失割合を決めればよいのでしょうか。今回は、交通事故で相手が過失を認めない場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。
参考:「令和4年中における交通人身事故の発生状況について」(千葉県警察)
1、交通事故の過失割合とは?
交通事故の過失割合とはどのようなものなのでしょうか。以下では、交通事故の過失割合の基本事項について説明します。
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(1)過失割合とは
交通事故の過失割合とは、事故が発生した場合に被害者側の責任と加害者側の責任を割合で数値化したものになります。交通事故の被害者であったとしても、事故の発生に関して何らかの責任がある場合には、被害者にも過失が生じることがあります。
たとえば、信号待ちで停止中に追突された事故であれば、被害者には何の責任もありませんので、過失割合は、「被害者:加害者=0:100」となります。
他方、信号機のない交差点での直進車と右折車との事故については、双方に一定の責任が生じますので、過失割合は、「被害者(直進車):加害者(右折車)=20:80」となります。 -
(2)過失割合は保険会社と協議して決める
交通事故の過失割合は、当事者または当事者が加入する保険会社の担当者との話し合いによって決めるのが一般的です。
その際には、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ38号)という書籍を利用して過失割合を判断します。
これは、過去の交通事故の裁判例などをもとにして、過失割合を類型化したものであり、事故態様に応じた基本の過失割合や事故状況に応じた修正要素などが記載されています。
実際の事故態様や事故状況をあてはめることによって、具体的な過失割合を判断することができます。 -
(3)過失割合は賠償額に影響する
交通事故の賠償額は、最終的に過失割合を踏まえて算出されます。
そのため、被害者に事故の責任がない場合には、過失相殺はされず、満額の賠償金を受け取ることができます。
しかし、被害者にも一定の責任がある場合には、過失相殺により賠償額から過失割合に応じた金額が減額されてしまいます。
このように過失割合は、被害者が受け取ることができる賠償金に影響を与えますので、適正な過失割合を定めることが重要です。
2、相手が過失を認めない……対処法は?
相手が過失を認めない場合には、以下の対処法が考えられます。
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(1)過失割合に関する証拠を集める
過失割合は、事故態様に応じて基本の過失割合を定め、個別具体的な事故状況に応じた修正要素を加味して最終的な過失割合を決めていきます。
相手が過失を認めない理由としては、双方が主張する事故態様が異なっている、修正要素を考慮するかどうかの認識が異なっている、などが考えられます。
お互いの認識がずれている状態で話し合いをしても、解決は困難ですので、そのような場合には、客観的な証拠を提示する必要があります。
過失割合を立証するための証拠としては、以下の証拠が挙げられます。- ドライブレコーダーの映像
- 実況見分調書
- 防犯カメラの映像
- 事故車両の写真
- 目撃者の証言
相手が過失を認めない場合には、まずは、上記の証拠を集めることから始めるとよいでしょう。
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(2)相手の保険会社に証拠を提示する
交通事故の過失割合を立証するための証拠が入手できたら、それを相手の保険会社に提示します。過失割合に関する客観的な資料が提示されれば、相手も認識を改めて自己の過失を認めてくれる可能性があります。
加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者と直接交渉しなければなりません。その場合には、交渉の経過を証拠に残すためにも、内容証明郵便を利用した書面による方法で行うようにしましょう。 -
(3)調停や裁判を利用する
交通事故の過失割合は、当事者または保険会社との話し合いによって決めるのが一般的です。しかし、話し合いでも相手が過失を認めない場合には、調停や裁判といった法的手続きを利用する必要があります。
調停は、基本的には話し合いの手続きになりますが、当事者の間に調停委員が入って話し合いを進めてくれます。相手が不当な要求をしているような場合には、調停委員の説得により解決が見込めます。
裁判は、当事者の主張や提出された証拠に基づいて、裁判官が適正な過失割合を判断してくれます。過失割合を立証できる客観的な証拠をお持ちの場合には、裁判によって適正な過失割合が認定される可能性があります。
3、慰謝料を増額したい! 方法はある?
保険会社から提示された慰謝料額に納得できない場合にはどうしたらよいのでしょうか。
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(1)慰謝料の計算方法には3つの基準がある
交通事故の慰謝料の計算方法には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの基準があります。
自賠責基準とは、自賠責保険会社が被害者に慰謝料を支払う場合に利用する基準であり、3つの基準の中では最も低い金額になります。
任意保険基準とは、加害者の任意保険会社が被害者に慰謝料を支払う場合に利用する基準です。基準の具体的な内容は公表されていませんが、一般的には自賠責基準と同程度かそれよりも少し上乗せされた金額であることが多いです。
裁判所基準(弁護士基準)とは、弁護士が示談交渉をする際に利用する基準であり、裁判になった場合もこの基準が利用されます。裁判所基準は、過去の交通事故の裁判例をもとに基準化されたものであり、3つの基準の中では最も高い金額になります。 -
(2)慰謝料を増額するには弁護士への依頼が不可欠
慰謝料の3つの算定基準の中では、裁判所基準が最も被害者にとって有利な基準です。
しかし、裁判所基準を利用して示談交渉をできるのは、弁護士に依頼した場合に限られます。保険会社から提示された慰謝料額に納得いかないという場合には、弁護士に依頼することによって、慰謝料を増額できる可能性があります。
そのため、少しでも有利な条件で示談をしたいという方は、弁護士への依頼が不可欠といえるでしょう。
4、交通事故トラブルを弁護士に相談するべき理由
交通事故のトラブルでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)適切な過失割合を判断してもらえる
交通事故の過失割合で争いが生じた場合には、どのような割合が適切であるかを判断してもらう必要があります。
弁護士であれば、事故態様や具体的な事故状況を踏まえて、適切な過失割合を判断することができます。過失割合に関する争いを早期に解決するためにも、まずは、弁護士に相談するようにしましょう -
(2)加害者や保険会社との交渉を任せることができる
相手が過失を認めない場合には、過失割合に関する客観的な証拠を提示して相手を説得していく必要があります。
しかし、交通事故は何度も経験することではないため、どのような証拠が必要で、どのような方法で証拠を集めればよいかわからず、交渉が難航することがあります。弁護士に依頼をすれば、証拠収集から相手方との交渉まですべて任せることができるので、適切な過失割合になる可能性が高くなります。
ひとりで対応するのが難しいという場合には、早めに弁護士に相談をするとよいでしょう。 -
(3)訴訟などの法的手続きにも対応してもらえる
交渉でも相手が過失を認めない場合には、最終的に裁判所に訴訟提起をする必要があります。裁判になれば、証拠に基づいて法的主張を展開していかなければなりませんが、一般の方には難しい作業といえます。
裁判手続きを通して自己に有利な結果を出すためには、交通事故問題の解決実績がある弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
交通事故では、当事者の責任に応じて過失割合を決める必要があります。過失割合は賠償額に影響するため、相手が過失を認めない場合がありますが、そのような場合には客観的な証拠に基づいてしっかりと反論してくことが大切です。
過失割合に関する証拠収集や相手との交渉は、実績ある弁護士のサポートが必要にあります。交通事故の過失割合でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています