事故被害者は保険会社にいつ連絡すべき? 手続きの流れと必要な対応

2024年05月30日
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事故被害者は保険会社にいつ連絡すべき? 手続きの流れと必要な対応

千葉県警が公表する「交通事故統計資料集 令和4年」によると、令和4年中に千葉市内で起きた交通事故発生件数は2162件でした。これは千葉県内でも最も多い数字で、同時に死者数、負傷者数ともに県内で最も多かったことがわかっています。

いくらご自身で気をつけていても、交通事故の被害にあってしまうことがあります。その場合、警察だけでなく、ご自身が加入している保険会社にも連絡する必要があることをご存じでしょうか。交通事故のやり取りは、当事者同士ではなく保険会社を通じて行うことになりますので、適切なタイミングで連絡をすることが大切です。

本コラムでは、交通事故にあった後に保険会社にいつ連絡をすべきかといったタイミングから、その後の手続きの流れ、弁護士に相談すべきケースについて、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスの弁護士が解説します。


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1、事故発生以降に被害者がすべきこと

交通事故の被害にあった場合には、どのタイミングで保険会社に連絡をすればよいのでしょうか。以下では、事故直後の流れについて説明します。

  1. (1)安全な場所への移動

    交通事故にあった場合には、事故車両をそのままの状態にしていると、交通渋滞の発生や別の事故が生じる可能性があります。そのため、交通事故の続発を防止するためにも、事故車両を交通の妨げにならない安全な場所に移動させるようにしましょう。

    事故車両の状態によっては移動が困難な場合もありますが、その場合には、三角表示板や発煙筒などを利用して、後続車両に事故の存在を知らせるよう努めましょう。

  2. (2)警察への連絡

    怪我の有無や事故の大小を問わず、交通事故が発生した場合には、必ず警察に連絡をしましょう。警察に連絡をすることで、自動車保険を利用する際に必要となる「交通事故証明書」を発行してもらえます。また、ご自身が怪我をしている場合には、物損事故ではなく人身事故として届け出をします。

  3. (3)実況見分への立ち会い

    警察に連絡をすると、警察官が事故現場に来ますので、そのまま実況見分が行われます。実況見分は、基本的には当日に行われますが、当事者が怪我をして立ち会いができないという場合には、後日行われることもあります。

  4. (4)保険会社へ連絡するタイミングは事故当時者の義務を果たしたあと

    実況見分が終わった段階で、保険会社への連絡を行います。保険会社への連絡のタイミングは、特に決まりがあるわけではありませんが、上記のような交通事故の当事者の義務を果たしてから、すぐに連絡をするのがよいでしょう。

    追突事故のように、被害者にまったく過失のない事故であったとしても、保険会社に連絡をしておけば、今後の進め方についてのアドバイスをもらうことができます。契約内容によっては、レッカー車や代車の手配なども保険会社がしてくれることがありますので、必ず保険会社には事故の連絡をするようにしましょう。

  5. (5)病院での治療

    交通事故で怪我をした場合には、病院での治療を受けます。事故から一定期間が経過後に受診をすると事故との因果関係を否定されてしまうおそれもありますので、病院での治療は、事故当日か遅くとも2~3日以内に行うようにしましょう

2、保険会社との間で発生しうる手続きと流れ

交通事故にあった場合には、保険会社との間でさまざまなやり取りをすることになります。以下では、自分の保険会社と相手の保険会社に分けて、発生しうる手続きと流れについて説明します。

  1. (1)自分の保険会社との間での手続き

    交通事故の被害者であっても後日過失があると判明した場合には、自分の保険を使わなければならないこともあります。また、加害者が無保険であった場合にも自分の保険を使う必要があります。

    そのため、交通事故の被害者であっても自分の任意保険会社に連絡をしておくと安心です。

    自分の保険会社との間では、主に以下のような手続きについてのやり取りが行われます。

    ① 人身傷害保険の利用
    人身傷害保険とは、交通事故によるご自身や同乗者の怪我、後遺障害、死亡による損害を補償する保険です。
    交通事故の被害者は、通常は、加害者の保険会社から損害の賠償を受けることができますが、賠償金を受け取るためには、加害者の保険会社との間で示談交渉を行い、示談を成立させる必要があります。また、被害者にも過失がある場合には、過失部分が相殺された金額しか支払われません。
    しかし、人身傷害保険を利用すれば、加害者の保険会社と示談が成立する前であっても、保険金を受領することができます。また、被害者に過失があったとしても、過失相殺されることなく支払いを受けることができるというメリットがあります。

    ② 車両保険の利用
    被害者の方が車両保険に加入している場合には、車両保険の利用することもあります。
    車の修理費についても他の賠償と同様に加害者の保険会社から支払いを受けることができますが、保険会社との間で示談が成立しなければ修理費を受け取ることができません。そのため、示談交渉が長期化しているようなケースでは、修理費の支払いを受けることができず、破損した車の修理ができないということもあります。
    このような場合には、車両保険を利用することによって、加害者の保険会社との間の示談成立前であっても、保険金額の範囲内であれば支払いを受けることができます。ただし、車両保険を利用すると保険の等級がダウンし、保険料が上がるといったデメリットもありますので、ご自身の保険会社と相談をしながら利用を検討しましょう。

    ③ 示談代行サービスの利用
    被害者にも過失がある事故の場合には、保険会社の示談代行サービスを利用することができます。保険会社の示談代行サービスを利用すれば、過失割合や損害額についての交渉を保険会社に任せることができます。
  2. (2)相手の保険会社との間での手続き

    相手の保険会社との間では、主に以下のような手続きについてのやり取りが行われます。

    ① 治療費などの支払いに関するやり取り
    交通事故で怪我をした場合には、被害者は、病院で治療を受けることになります。加害者が自動車保険に加入している場合は、病院に支払う治療費については、保険会社が直接支払いを行ってくれるのが通常です。
    その場合には、加害者の保険会社から治療費の支払いに関する「同意書」が送られてきますので、被害者としては、内容を確認した上で、署名押印して、保険会社に返送する必要があります。

    ② 治療の打ち切りに関する連絡
    病院での治療が一定期間続くと、保険会社から治療の打ち切りに関する連絡が来ることがあります。
    しかし、治療の終了を判断するのは、保険会社ではなく、治療を担当している医師になりますので、医師が治療の継続が必要だと判断している場合には、保険会社の提案に同意して治療を終了する必要はありません。その場合には、医師の診断書などを提出して、引き続き治療費の支払いをしてもらえるよう求めていきましょう。
    仮に、治療費の支払いが打ち切られたとしても、被害者にとって必要な治療である場合には、示談交渉の際に、打ち切り後の治療費も損害に含めて請求することができます。

    ③ 示談の提案
    治療が終了した段階で、保険会社から示談の提案がなされます。人身事故の場合には、怪我の程度や内容に応じて、以下の項目について、金額が記載された示談書が届きます。
    • 治療費
    • 通院交通費
    • 休業損害
    • 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
    • 後遺障害慰謝料
    • 逸失利益
    上記の各項目についての金額を精査した上で、納得できる金額であれば示談に応じます。
    ただし、保険会社から提示される賠償額は、交渉によって増額することができる可能性がありますので、直ちに示談に応じるのは避けるべきでしょう。

3、弁護士に相談したほうがよいケース

以下のようなケースについては、弁護士に相談をしたほうがよいでしょう。

  1. (1)弁護士費用特約が付いているケース

    弁護士費用特約とは、自動車保険の特約のひとつであり、弁護士に依頼した場合の弁護士費用を上限300万円まで補償する特約です。弁護士費用特約を利用することによって、賠償額が数千万円になるような死亡、重度の後遺障害が生じる場合を除き、ほとんどの事案で弁護士費用の負担を0円にすることができます。

    弁護士に依頼をした場合、弁護士費用がどれぐらいかかるのか不安があり相談を悩まれるケースもあるようです。しかし、弁護士費用特約が付いている場合には、そのような不安なく弁護士を利用することができますので、積極的に弁護士に相談をするとよいでしょう。

    なお、弁護士特約の補償内容は保険会社によって異なるため、事前にご自身の保険会社に確認しておくことをおすすめします。

  2. (2)後遺障害が生じるケース

    交通事故で怪我をした場合には、怪我の内容や程度によっては、治療を継続したとしても完治せず、後遺障害が生じてしまうこともあります。後遺障害が生じた場合には、通常の人身事故の賠償に加えて、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができますので、賠償額が高額になります。

    高額な賠償額となる事案については、保険会社から提示される賠償金と適正な賠償金との差額も大きくなってきますので、保険会社の提案に従って示談をしてしまうと、著しく不利な条件での示談になってしまうおそれがあります。そのため、適正な賠償金を獲得するためにも弁護士に示談交渉を依頼すべきでしょう。

  3. (3)保険会社とのやり取りに不安があるケース

    交通事故の被害者の方は、ほとんどの方が初めて事故を経験することになります。事故にあった場合には、保険会社との間でさまざまなやり取りをしなければならず、保険会社の指示に従って手続きを進めていくと、「本当にこのままで大丈夫だろうか」など不安になることもあるでしょう。

    加害者の保険会社は、あくまでも加害者側の立場になりますので、被害者の利益のために行動してくれるとは限りません。保険会社から提案された過失割合や賠償額について適切なものであるかどうか不安があるという方は、弁護士に相談をしてアドバイスを受けるとよいでしょう。

4、対応を弁護士に依頼することで得られるメリット

交通事故の対応を弁護士に依頼することによって、以下のようなメリットが得られます。

  1. (1)保険会社とのやり取りをすべて任せることができる

    交通事故の被害者になると、日常生活に加えて、怪我の治療を行わなければならず、それに加えて保険会社とのやり取りまでしなければならないとなると相当な負担となります。

    弁護士に依頼をすることによって、保険会社とのやり取りは弁護士にすべて任せることができますので、被害者の方の負担は大幅に軽減されるでしょう。また、弁護士に依頼をすることで、示談交渉に不慣れな被害者の方がよくわからず不利な条件で示談してしまうというリスクも回避することができます

  2. (2)慰謝料の金額を増額することができる可能性がある

    交通事故の慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの基準があります。この3つの基準のなかでは、裁判所基準が最も慰謝料の金額が高額になる基準ですが、弁護士に依頼をすることによって、裁判所基準による適正な慰謝料を請求することができるというメリットが得られます。

  3. (3)適切な後遺障害等級認定を受けることができる

    後遺障害が生じた場合には、後遺障害等級認定手続きによって認定された後遺障害等級に応じて、賠償額が変わってきます。より上位の等級認定を受けることができれば、それだけ賠償額が増えることになります。

    後遺障害等級認定の手続きには、加害者の保険会社がすべての手続きを行う「事前認定」という方法と、被害者がすべての手続きを行う「被害者請求」という方法があります。加害者の保険会社は、被害者に賠償金を支払う立場にありますので、より上位の等級が獲得できるように積極的に行動してくれるとは限りません。

    そのため、適切な後遺障害等級認定を受けようとする場合には、被害者請求の方法を選択する必要があります。弁護士に依頼をすれば、被害者請求の方法をとったとしても、被害者自身の手続き的な負担はほとんどありません。

5、まとめ

交通事故の被害にあった場合には、なるべく早くご自身が加入する保険会社へ連絡すべきです。相手方保険会社からは、事故にあった日から数日以内に連絡が来ることが多いようです。いずれにしても、治療をしながら保険会社との間でさまざまなやり取りをしなければなりません。保険会社とのやり取りが不安な場合や、後遺障害になりそうな負傷をしたとき、弁護士費用特約などに加入されているのであれば、相手方保険会社との示談を成立させてしまう前、なるべく早いタイミングで弁護士に相談をすることをおすすめします。

交通事故の被害にあってお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 海浜幕張オフィスまでお気軽にご相談ください。交通事故専門チームの弁護士が、適切な慰謝料を受け取れるよう力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています